2018年は歴史的な米朝首脳会談の実現によって、世界を敵に回す北朝鮮の“暴発リスク”は一旦収まったかに見えた。だが、その後の米朝協議は膠着したまま、弾道ミサイルや核開発の継続が疑われる報道が出るなど予断を許さない状況が続いている。そして、2019年「米朝関係は再び緊迫する」と予測するのは、朝鮮半島問題研究家の宮田敦司氏だ。
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米朝関係が一気に緊張した2017年。超大国の大統領であるトランプ氏が、親子ほど年の差がある極東の小国の独裁者・金正恩と、子供じみた「チキンレース」を繰り広げていた。「チキンレース」のゴールは、2018年6月12日の史上初の米朝首脳会談となった。ここまで米朝関係が良好になると予想していた専門家は、ほとんどいなかっただろう。
◆「恋に落ちた」トランプ大統領
米朝関係は、トランプ大統領の言葉を借りれば「開戦目前だった」激しい対立から、金正恩を褒めちぎる関係へと大転換した。2018年11月の中間選挙を意識していたとはいえ、変わり身の早さには驚くばかりだ。
トランプ大領領は2018年9月29日にはウェストバージニア州ウィーリングでの支援者集会での演説で「(金正恩と)恋に落ちた」と繰り返し語った。
しかし、よくよく考えてみると、変化したのはトランプ大統領であり、「恋人」である金正恩は首脳会談で笑顔を見せただけで、主張していることは何も変わっていない。相思相愛ではなく、トランプ大統領が一方的に「恋人になった」と決めつけているだけなのだ。
そんなちぐはぐな状態の両国が、2019年はどのような関係に発展するのだろうか。間違いないのは「恋愛関係」が冷え切ることだ。米国の望み通りの「非核化」が実現する可能性はゼロだ。もちろん、米国まで届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)も北朝鮮は手放さない。
2度目の米朝首脳会談が開催されるかどうかは微妙なところだろうが、トランプ大統領にしてみれば、北朝鮮問題は自分の評価につながらないと認識しているだろうから、金正恩への関心は消え失せているだろう。おまけに、トランプ大領領の目の前には、北朝鮮問題よりも優先すべき課題が山積されている。選挙での得票につながらない問題は後回しにせざるを得ない。