◆カモにされる大統領
北朝鮮にしてみれば、歴代の米国大統領のなかでトランプ大統領ほど「扱いやすい」大統領はいなかっただろう。下手に出ておだてあげればいいからだ。だから、トランプ大統領の在任中に米国からできる限り譲歩を引き出そうとするはずだ。
中国やロシアから支援を得て、なおかつ韓国の文在寅政権から搾り取るだけ搾り取るつもりの北朝鮮としては、米国とはこのまま膠着状態でも構わないわけだが、できれば実利を得たいところだろう。
しかし、北朝鮮に関心がなくなったトランプ大統領を振り向かせることは簡単なことではない。外交ルートで会談を打診しても無視されるだろうから、ICBMを発射するという強硬手段に出る可能性がある。北朝鮮は過去にも米国の関心を引き、交渉のテーブルにつかせるために強硬な態度を繰り返してきた歴史がある。
◆ミサイルでトランプ大統領を振り向かせる
2006年7月5日、北朝鮮は弾道ミサイルを1日で7発、2009年7月4日にも弾道ミサイルを1日で7発、2017年7月4日は新型の大陸間弾道ミサイル「火星14」を1発発射した。ちなみに7月4日は米国の独立記念日である。さしずめ巨大な“祝砲”というところだろうか。
過去の北朝鮮の行動を見る限り、2019年も米国の独立記念日に合わせて「祝砲」が撃たれる可能性はあるだろう。それが日本海へ落下するか、日本列島を飛び越えて太平洋に落下するかは、その時の米朝関係によるだろう。より険悪なムードを「演出」するのなら太平洋ということになる。
米朝関係をあえて険悪にする狙いは、米朝交渉を再スタートさせることにある。交渉が再び始まれば見返りを要求できるからだ。いくら米国が「非核化」が実現するまで見返りは与えないといっても、大幅な見返りなしに「非核化」を一歩も前進させる気がない北朝鮮に、ひたすら要求ばかりしていても何も変わらない。
米国は、北朝鮮北西部にある寧辺の核関連施設を爆撃することを匂わせて北朝鮮を脅すかもしれないが、それが可能なら、とっくの昔(1994年の第1次核危機)に実行している。それが出来なかったから核兵器が完成してしまったのだ。