かかりつけのクリニックを受診したA氏は、胸部レントゲン検査を受けた。その結果、肺に小さな“影”があり、精密検査を受けることに。胸部CT検査を受けると、結果をこう告げられた。
「初期の肺がんです」
思わぬ言葉に目の前が真っ暗になったA氏。あれこれ考える時間的猶予も精神的余裕もない中で、がん治療に実績のある病院に移る必要が出てきた。
この場面でもA氏は「二択」に直面した。同じ大病院でも、「総合病院」と「がん専門病院」のどちらを選ぶかは大きな別れ道だ。浜松オンコロジーセンター院長(腫瘍内科)の渡辺亨医師は、がんセンターの「設置目的」に注意すべきだという。
「がんセンターは、最先端の優れたがんの治療ノウハウが集まる専門病院です。ただし、もともとの設置目的は治療だけではなく、臨床試験などの研究で、患者が被験者になって先端医療の治療法や新薬の効果などを試す場でもあります。
例えば新薬を処方された患者に副作用が出たり、研究を優先するため患者の望む治療が受けられないケースも考えられます。総合病院と比較して、がんセンターでは治療が不確定なものになる可能性があるのです」
心臓や肺などに持病を抱えた患者ががん治療を受けると、感染症や肺障害などの合併症が生じる怖れがある。各診療科の専門医が揃う総合病院では、がん患者が治療中に合併症を患っても、万全のサポートが期待できるという強みがある。
A氏は悩んだ末、がん治療に実績のある総合病院を受診することにした。
※週刊ポスト2019年1月11日号