「洪門とジェニーは非常に長きにわたる友人だ。彼女は市議からBC州議を経て、連邦議員へステップアップした優秀な政治家だ。我々は長らく彼女をサポートしてきた」
洪門幹部のセシル(前出)はそう認めた。北京との関連が深い洪門の団体を通じて、カナダの華人議員の「反日」運動が強化されていると見ていいだろう。
他方、日本を過度に悪魔化するような歴史解釈の横行に、戸惑いを見せるのが在留邦人や日系人たちだ。南京記念日制定に反対する「カナダの人種和合を促進する期成同盟」委員長で、日系2世のゴードン門田氏はこう懸念する。
「私たち日系人も、華人系住民も同じカナダ人です。(中国のナショナリズムを反映した)南京記念日の制定は、カナダ社会の多様性を破壊してしまう。ジェニー議員らは『歴史の過ちを繰り返さないため』と主張しますが、そこへ至る前に華人と日系人の摩擦を拡大させる結果を生んでしまうのではないでしょうか」
BC州は伝統的に日系人が多く、大戦中にはカナダ政府による強制収容を受けるなど辛酸を舐めた歴史を持つ。多数派の華人らが、日中間の歴史問題を蒸し返す政治運動を起こすことで、日系人への排斥や迫害が再燃することへの恐れは強い。
華人たちは、移住先でも中国へのナショナリズムを捨てない。言論の自由が保証された民主主義国家で、愛国秘密結社のサポートを受けた華人議員たちが「反日」活動を展開するというナンセンスな現実が、海の向こうで拡大を続けている。
※SAPIO2019年1・2月号