小笠原:わが家には、患者さんの力を引き出すパワーがあるんですよね。痙攣発作のあるかたが自宅に帰ったら畑に行けるまでになったり、「退院したら5日の命」と宣告されたかたが、自宅に帰ってから7年経った今もピンピンされているなど、余命宣告された人が驚くくらい元気になったり長生きされたケースにもたくさん出会ってきました。
垣添:もう治らないということが明らかなとき、最期まで病院にしがみついている必要はないですね。最期の生を謳歌するというのかな、自由に好きなことをすればいいんですよ。
小笠原:治療にもう打つ手がないというとき、病院の主治医から「病院にいるよりも家の方が幸せですよ。自由ですよ。好きなこともやれますよ。奇跡も起こりますよ」って家に帰ることを家族に進言してもらいたいですね。そうでないと、患者さんやご家族は「病院にいればまだ助かるんじゃないか」「まだ大丈夫じゃないか」と間違えてしまい、かわいそうですよ。
垣添:特に若い医師ほど頑張って、いろんなことをやりますからね。本当は手を打ち尽くして、これから先は医療的に難しいとわかるはずなんですよ。しかし、きちんと伝えてあげないから、家族も患者さんもまだ他にもっとないかと思って、ネットで調べて、根拠の定かではない免疫療法に引っ張っていかれたり、健康食品なんか、下手をしたら500万~600万円くらい、あっと言う間に飛ぶような治療もありますから。その結果、最期まで苦しみ抜いて亡くなるっていうのは大変不幸なことです。
小笠原:家族がしてはいけないことといえば、末期の患者さんの容体が急変したとき、動転して救急車を呼んでしまうこともそうですね。患者さんは救命救急医療で心臓マッサージを施され、人工呼吸器をかけられちゃう。ご本人の意識が戻ったときは、人工呼吸器を外さないよう、手にミトンをはめられてる。人工呼吸器を外して死ぬこともできなければ、心臓マッサージで骨折した箇所が痛くても痛いと言えず、背中がかゆくてもかゆいと言えない。ただ涙を流すだけ。そうやって生きてる人の、どれほど多いことか。
垣添:私も救急車は呼ばないと決めていますし、心臓マッサージや人工呼吸器などの延命治療も要らないと意思表示しています。