ライフ

倉庫での単純作業がすごい! 61才オバ記者、30代上司に憧れ

倉庫でのパート体験をオバ記者がレポート(イラスト/腹肉ツヤ子)

 女性セブンの名物記者「オバ記者」こと野原広子(61才)が、倉庫での仕分けの仕事を体験。還暦オーバーのオバ記者を待ち構えていたのは…?

 * * *
 倉庫での仕分けは、60代シニア定番の、無言で手を動かす単純作業。だからこそ見えることもある。人を人とも思わない職場もあれば、「こんな人になりたい」と仰ぎ見る年下の上司がいたりして、すべては“人”しだい──。

 60才以上、シニア枠の私が短期で派遣されるのはバックヤード。要は人目につかないところで黙々と体を動かすわけ。

「そりゃ、表舞台は若い人の方がいいもんね」

 初めてパートタイマーの仕事を探した46才のときは、この現実にチクンと胸が痛んだけど、今は口でなく体で物事を片づけていく仕事が、面白くてたまらない。

 そう思うきっかけを作ってくれたのは、30代後半のエプロン母さん・Yさんだったの。

◆仕事の指示は「座って」。作業をするのも「座って」

 最初の職場の倉庫では、作業着を着せられ、トイレに行くにも一列に並び、30代女子の上司からバカ呼ばわり。

 一日の作業を終えて、300人は乗れるエレベーターに押し詰められたとき、誰かがつぶやいた「刑務所みたい。入ったことないけど」が耳から離れない。だから2件目の派遣先も倉庫での仕分けと聞いて、覚悟はしてたの。

 でもまあ、契約は1日だけだし、お金の心配をして家でひとりうつうつしているなら、時給1050円を積み重ねていった方がずっといい。そう言って自分を奮い立たせた。

 が、職場に入ると、オカッパ髪にエプロン姿のYさんが、私らの頭を指さして、「1、2、3、4。あなたまでこっち。5、6、7、8はあっち」って、いきなり番号かい。

「出た~っ。ここの“刑務所度”もそうとう?」と、身を引き締めたわよ。

 ところが仕事を始めてすぐ、どうも前の職場とは様子が違うんだわ。倉庫の中は、20代から70代までカジュアルな服を着た女性ばかり40人。

 それがいくつかのグループに分かれて、別々の作業をしているんだけど、指示も穏やかなら、作業ものんびりムード。誰かがミスをしても、「んー、じゃ、こうしようか~」とまぁるい反応なの。

 Yさんが私たち新人にまず言ったのは、「座って」。作業をするのも「座って」。働く人の体力を意味なく奪いたくない、とは言わないけど、そういうことよね。

◆30代後半の“人物“がさり気なく見守る職場

 で、最初に与えられたシール貼りは私の得意とするところ。誰よりも早く終えて心の中はブンブン丸よ。

 ところが次の作業に移ったら手も足も出なくなった。Aの書類に書かれた細かい数字とアルファベットの組み合わせが、Bの書類のものと一致したら、Cの封筒へ入れるという簡単なことなんだけどね。

 数字もアルファベットも苦手な私は、AからBに目を移す0・数秒の間に忘れちゃうんだよ。

 何度か「ん? ん? ん?」と戸惑っていたら、Yさんが「こっちに来て」と、隣の作業台へ移されたんだわ。

「…すみません」と私が小さくなっていると、「でも手先は誰よりも速かったじゃないですか」だって。自信を失いかけていた私にこのひと言がどれだけ力になったか。

 見るとYさん、自分の作業をしながら、今日が初日の人をさりげなく見守っていて、戸惑っている人がいればすっと近づいていって、過不足なく手を貸しているの。

 その間の言葉は最小限で、「ん?」とか「そうそう」とか。こんなYさんを“人物”と言わずして何というよ。そしてYさんのような人が回している職場が効率が悪いわけがない。すべての作業が定時の15分前に終わっていた。

 ああ、私もYさんみたいな人になりたい。この人と一緒に働きたい。そこまで思える年下の女性に出会ったのは初めてだった──。

※女性セブン2019年2月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
中国で延々と続く“高市降ろし”の反日攻勢にどう対抗するか? 「解決策のカギの1つは公明党が握っている」、大前研一氏の分析と提言
中国で延々と続く“高市降ろし”の反日攻勢にどう対抗するか? 「解決策のカギの1つは公明党が握っている」、大前研一氏の分析と提言
マネーポストWEB