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有名アニメ作品の「聖地巡礼」と鉄道、その現状と課題

沼津駅南口に保存されているSLの煙室扉と動輪。ラブライブ!劇中にも登場する


 ラブライブ!の作中では、その横で、津島善子が堕天使のパフォーマンスを披露するシーンがある。印象的なシーンではあるが、残念なことにJR東海や沼津駅、沼津市がラブライブ!を全面的にPRしている雰囲気は駅前からは感じられない。

 地域に密着した私鉄とは異なり、JRが全面的にラブライブ!を押し出すことは難しいのかもしれない。

 ラブライブ!とのコラボに力を入れているのは、三島駅-修善寺間の約19.8キロメートルの駿豆線を運行する伊豆箱根鉄道だ。

 伊豆箱根鉄道駿豆線の伊豆長岡駅は、駅舎全体がラブライブ!のラッピングで覆われている。この駅舎ラッピングが大規模だったため、ファンや地域住民の間で大きな反響を呼んだ。しかし、

「伊豆長岡駅では、2017年7月からラブライブ!のラッピングを施しました。しかし、市の”屋外”広告条例に抵触しているとの指摘を受けました。そうしたことから、2018年3月に“屋内”広告物に貼り替えることになりました。貼り替えと同時に、新しいデザインに変えています」と話すのは伊豆箱根鉄道総務課の担当者だ。

 ラブライブ!のラッピングが施されていた駅舎のガラス壁は、厚さが約1センチ。はた目からしたら、屋外だろうが屋内だろうが、さほど違いを感じない。それでも内側と外側の違いだけで、条例に抵触してしまった。

 市からの指摘を受けて新たに貼り替えられた屋内ラッピングは、屋外に貼り出されたモノよりサイズは大きくなった。これが、かえってファンを歓喜させた。

 ラブライブ!効果は、数字にも表れている。伊豆長岡駅の一日平均乗降人員は、2015年度が4816人。対して、2017年度は4953人。一日あたり100人以上も増加した。

 一日に100万人以上も利用される東京圏や大阪圏と比べれば、100人の増加は微々たる数字に思えるかもしれない。しかし、地方の鉄道にとって、一日100人の利用者増はかなり大きい。

 人口減少待ったなしの地方都市にとって、公共交通の維持は至上命題になっている。なかでも、鉄道インフラの存亡は街の衰退を左右する。それだけに、自治体も鉄道維持には躍起になる。

 しかし、どこの市町村も自治体財政は逼迫しており、地域にとって重要だとわかっていながらも鉄道会社の経営支援のために税金を投入することに二の足を踏む。

 コンテンツツーリズムで聖地巡礼者を呼び、巡礼者たちが鉄道を利用することで鉄道維持にかかる地元住民の負担軽減にもつながる。それは、ひとえに地方都市の生存戦略にもなるだろう。

 しかし、アニメファンを金づると見てしまえば、巡礼者はそっぽを向く。そうしたら、せっかくの地域振興が水の泡だ。

 アニメの放映期間は原則的に3か月。マンガの場合はそれよりも長い連載になるが、それでも聖地巡礼は一時的なブームでしかないと冷ややかに見る向きもある。

 しかし、クレヨンしんちゃんの埼玉県春日部市やちびまる子ちゃんの静岡県静岡市(マンガ連載時は清水市)のように一般に浸透した聖地もある。

 地域資産として定着させるためには、地方自治体と鉄道会社の協力関係は不可欠だ。どのように巡礼者と向き合うのか? 地方自治体と鉄道会社の新たな向き合い方が注目される。

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