そう言われて、昔よく話を聞かせてもらった任侠右翼団体の会長を思い出した。今はもう故人だが、左手の小指と薬指が根元からきれいになかった。
「指を落とすのは利き手と逆が多い。昔は女性問題でケジメをつける時は右手と言われてたけど、今はない。落とすのは、1つの指で関節ごとに3回まで。まあだいたい2回だけど」
小指なら落とすのは2回、第2関節まで、というのが今のヤクザだという。だが、ケジメをつける相手によって落とし方は変わる。
「自分の組内なら爪がないとこでもOK。第1関節を落としてあった指でも、第2関節のとこで落とせば許される。でも上部組織や偉い人に持って行くには、爪が付いている指でないといけない」
指詰めにも作法があるのだ。
「自分に指がない人は、簡単に『指を持ってこい』って言うんだよね」
自分がケジメとして指を落とした人は、親になった時、部下にも簡単に落とせと言うのだそうだ。
「うちはみんな指があるが、組長に指がない組のやつらは、みんな指がない。先日、新しく組長になったやつがいるんだけど、そいつ、指がないんだよ。あそこの組のやつらはかわいそうだね。そのうち、み~んな指がなくなる(笑い)」
暴力団幹部は左手をさすりながら笑った。
ところで、持って行った指はどうなるのか?
「親分がそのままゴクリと飲む込む」
暴力団幹部は珈琲に添えられて出てきたチョコをつまむと、上を向いて口を開け、ポンと口の中に放り込むとゴクンと飲み込んだ。
「腹に収めるってね」
組によっては組長が、その指をその場でそのまま飲み込むのだという。想像するとなんともグロい。喉の奥が詰まりそうになる。「まあほとんどは家に置いているかな」と暴力団幹部はさらりと答えた。
稼業の世界では、まだまだそんなことが続いている。