結果的に、1試合で「ドリブル」は23回、「突っかけろ!」「仕掛けろ!」「入ってけ!」という関連語を含めても54回に留まった。
松木氏は、堂安がペナルティエリア内で倒される7分13秒(433秒)までにドリブル関連語を9回も口にしていた。つまり48.1秒に1回のペース。そう考えると、もしVARが導入されておらず、0対0のまま後半(+ロスタイム4分3秒)が終われば、松木氏は1試合でドリブル系の言葉を後半だけで61~62回言っていたかもしれない。前半の42回を足せば、実に100回超えになる計算だ。
こんな仮定をしても、何の意味もない。しかし、これだけはハッキリ言える。日本の人口1億2680万人の中で、「ドリブル」と発するだけで周りを楽しくさせる人間は松木安太郎しかいない──。
【注1:試合中の言葉は出来る限り、そのまま再現しているが、分かりづらさを回避するため、中には簡素化している部分もある。注2:小数点2位以下を四捨五入】
●文/岡野誠:ライター・芸能研究家。研究分野は田原俊彦、松木安太郎、生島ヒロシ、プロ野球選手名鑑など。著書に、本人へのインタビューや関係者への取材、膨大な資料の緻密な読解を通して、田原俊彦という生き方を描いた『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)。