現在、東京・新宿の歌舞伎町には250店ほどのホストクラブがあるとされる。2000年代前半頃からテレビや雑誌を賑わすようになり、きらびやかなイメージと共に流行ったが、その数は大きく変わっていない。「変わったのは“質”です」と、10年ほど前に引退したある元ホストは言う。
「今のホストって普通に『吉野家』とか『ガスト』でメシ食ってますよね。自分の時代では考えられないです。誰に見られているかもわからないのに、カッコ悪くてそんなことできない。当時は、食いたくもない焼肉と寿司ばっか食ってました」
近年、時間制で料金が変わる「メンキャバ」や、スーツではなくカジュアルな服装で接する「メンズバー」といった業態が台頭し、いわゆる「低価格ホスト」が増えている。
客層も変わった。2000年代前半当時、ホストクラブは「お金持ちのマダム」や「女性経営者」が余裕を持って遊ぶ場所だったが、不況の影響か、そうした客は減った。今は若い女性相手に、“薄利多売”するしかない。
その分、前出の元ホストは「節操がなくなった」と語る。先輩が後輩を食べさせ、礼儀を教える、体育会系の「ホスト道」は今や昔の話。一方で、ホストだけで生活していくのは至難だという。
「顔のクオリティーは段違いに上がっています。みんな整形ですが。でも、ほとんどのホストは月の給料が10万円あればいい方。替えはいくらでもいるから入店3か月でノルマ達成できなければクビ。給料の天引きや罰金もあり、正直キツイです」と語るのは5年前まで現役の人気ホストだった飲食店オーナーだ。
固定客をつかみ、人気順位「ナンバー」を得ても、より大きなプレッシャーがかかる。「それで病むホストもいるし、追い詰められたホストは女性客に何をやっても平気。カネがないOLでもショップ店員でも、ツケで飲ませて風俗に堕とすなんて当たり前なんでしょう」(飲食店オーナー)
昨年10月、歌舞伎町では少なくとも7人の女性が飛び降り自殺を図った。10月はホスト、風俗業界ともに閑散期。ホストクラブへの掛け(借金)が払えなくなり、ホストから追い込まれる女性たちが多くなることが、歌舞伎町の飛び降りの連鎖を呼び込んだとみる業界関係者も多い。
年末年始、歌舞伎町には変わらずネオンが煌々と輝いた。「人が降る」といわれた狂乱から約3か月。
吹く風を避け、光に目を背け、女の子たちは今日も一時の快楽を求めて夜の街に消えていく。
※女性セブン2019年2月7日号