◆日本ではなぜ仕事より態度を監視するのか
にもかかわらず、なぜ日本では人事評価や人事管理、それに世間の目も「仕事」にフォーカスできないのか?
その理由は、突き詰めると仕事の分担が明確に決められていないところにある。分担が曖昧なので、一人ひとりがどれだけの貢献をしているか、役割を果たしているかを正しく把握できない。そのため見かけの勤勉さで評価するしかないのだ。
一方、欧米のように一人ひとりの職務が明確に決められていると、仕事の出来不出来や役割を果たしているかどうかが明確になる。不祥事が起きたときも、だれの責任かはっきりする。従って、職員の態度や行動を常に監視したり、細かくチェックしたりする必要はない。仮に国民や市民から「サボっているのではないか」とクレームがきても、仕事をしっかりこなしていれば弁明できるわけである。
今後IT化、AI化が進めば公務員の世界でも頭脳労働がさらに増えることは間違いない。頭脳労働は仕事の重要な部分が頭のなかで行われるので、外見から仕事のプロセスを評価することも、管理することも難しくなる。
にもかかわらず、これまでのように態度や仕事ぶりばかりに目を向けていると、「やる気の空洞化」がいっそう進み、ミスや怠慢、あるいは外見だけを取り繕った不祥事も増える恐れがある。
組織的な不祥事を繰り返さないためには、熱意や責任感の不足を嘆くだけでなく、それをもたらしている根本の部分にメスを入れることが必要だ。