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2019.01.29 07:00  NEWSポストセブン

厚労省不正は氷山の一角 公務員に「やる気の空洞化」蔓延か

◆「やる気の空洞化」はなぜ起きたのか?

 ところが、それと裏腹に仕事に対するエンゲージメント(熱意)は、どの調査結果を見ても日本人が最も低い。出世したいとか、管理職に就きたいという人も減少する一方である。また国民一人あたりのGDP(国内総生産)や国際競争力は1990年代半ばからの低下傾向に歯止めがかからないし、時間あたりの労働生産性はアメリカ、フランス、ドイツのほぼ3分の2の水準にすぎない。いわば「やる気の空洞化」が起きているのである。

 それが最も顕著な形であらわれているのが公務員ではないだろうか。では、なぜ公務員に「やる気の空洞化」が起きているのか? 考えられる理由が2つある。

 1つは人事管理、人事評価の変化である。公務員には「職務に専念する義務」が法律で定められている。ただ、何をもって職務に専念しているか否かを判断するのは解釈に委ねられる部分が大きい。

 近年はそれを厳格に運用し、勤務時間や勤務態度などを厳しくチェックする傾向にある。また国・地方とも人事考課制度の導入が義務づけられ、働きぶりが賞与や昇給などに反映されやすくなった。つまり勤務態度や勤勉さが、これまで以上に問われるようになったのである。

 もう1つはマスコミや世間の目である。公務員の仕事ぶりや言動に対してマスコミや国民・市民から厳しい目を向けられるようになり、勤務中の喫煙や短時間の離席といった細かい「ルール違反」まで大きく取りあげられる。

 また問題行動がSNSで拡散されるケースも増えている。しかし仕事の成果があがっていないとか、貢献度が低いといった問題が批判を浴びるケースはめったにない。公務員が仕事の中身より「見かけ」をよくしようと考えるのは当然だろう。

◆仕事をこなしていたら目くじらを立てない欧米

 それは世界共通の現象なのか? 疑問を解くため、私は数年前にアメリカやフランス、オーストラリアなどの役所を訪ね、公務員のマネジメントについて調査をした。

 アメリカでは5つか6つの市役所でシティマネジャー(市の最高経営責任者)に、「勤務時間中、職員が喫茶店に入ることは許されないか?」という質問をぶつけてみた。すると、どこでも「仕事をこなしている限り問題ない」という答えが返ってきた。

 消防や警察も同じだ。アメリカでは消防士がはしご車で堂々とレストランへ食事に行っているし、ヨーロッパでは警察官が制服のままパブでビールを飲んでいる。それが非難されないばかりか、店や市民からは治安によいとむしろ歓迎されているそうだ。

 彼らの働き方は、日本人の感覚からするとたるんでいるように見えるが、メリハリがはっきりしていて、いざというときには頼りになる。

 たまたま私がアメリカのボストンで買い物をしていたとき、若い男が店のガラス戸を拳でたたき割った。すると素早く一人の警官が駆けつけ、猛然と男に飛びかかり組み伏せた。凶悪犯にも単独でひるまず立ち向かう勇敢な姿は、テレビニュースなどでもしばしば映し出される。いざというとき、この勇敢さと行動力を日本の警察官に期待できるだろうか、とついつい考えてしまう。

 もちろん、これらは一つの断面に過ぎず、日本の公務員と欧米の公務員のどちらが優れているかは一概にいえない。ただ「仕事さえしっかりこなしていればよい」という欧米の考え方は、態度や勤勉さを重視する日本と好対照だ。そして国民・市民にとって仕事内容と態度や勤勉さのどちらが大切かといえば当然、前者だろう。

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