「彼はいわゆるヘテロ(異性愛者)。もしかしたら、自分はデミセクシャル(親密になった相手にのみ性的感情が生まれるセクシャリティー)かもしれないと期待もしたけれど、違いました。
ただ、彼の方が性的な関係や子供を望んだら、自分はできる限り応えようと覚悟していました。でも、彼にもそんな希望はなく、『一緒にいて安心できる人がほしい』と言ってくれたんです。性行為自体は試したこともあって、結果、行為そのものはできたのですが、私の中には虚無感しか生まれなかった。『これは、私たちには必要じゃないね。それよりも、おいしいご飯を食べに行こう』という話になりました。私たちにとっては、おいしいものを一緒に食べて、感情を共有する方が幸せなんです」(和泉さん)
◆共通の話題がほしかった
もちろん、理解しづらい人もいるかもしれないが、和泉さんとパートナーが強い絆で結ばれていることは間違いない。
「彼とは、お互いになんでもさらけ出せます。お風呂も一緒に入りますよ」と、笑う和泉さんに、「恋愛がしたかったと思いますか?」と尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「恋愛したかったというより、みんなと共通の話題がほしかったです。私はずっと『あいつは変だ』と言われ続けてきたので、“普通”になりたかった。でも今は、社会的な『普通になる』という形ではなく、自分のあるがままを受け入れてくれる彼と出会えたことに、とても運がよかったと感じています。過去のつらい経験も、きっと彼に出会うための運をためていたんだと思っています」(和泉さん)
長い苦しみの先に出会った明るい光──彼のことが大好きだという思いが伝わってくる。
「彼との間にあるのは親愛であり敬愛であり、友愛でもあり、いろんな愛情です。ふたりで一緒にいる未来が想像できるから、不安がまったくないし、お互い『どっちが先に介護するかな』と当たり前のように話しています。彼と暮らすようになって、やっと自分はアセクシャルだとためらわず言えるようになったし、“女性”に生まれてきたことも肯定できて、母に初めて『産んでくれてありがとう』と言えました」(和泉さん)
世間での一般的な男女とは違うかもしれないが、ひとつの揺るぎない愛の形だ。いつの時代も、どのような人にとっても、“恋”に悩みはつきもの。あなたの大事な人に、あなたなりの愛の形は伝わっていますか?
※女性セブン2019年2月14日号