公衆電話を飲み込んでいったのは、当然ながら携帯電話です。このように携帯電話は普及率の上昇とともに様々なものを飲み込み続けていきます。
もう一つ、携帯電話が飲み込んだのがカメラです。携帯電話にカメラが内蔵されたのは、1999年の京セラが世界で初めて携帯電話にカメラを内蔵させ、発売したのが最初です。
最初はおもちゃのカメラのような解像度しかなかった携帯電話のカメラは、どんどんと解像度を上げていきます。2005年には300万画素だったものが、2007年には500万画素、2009年には1200万画素を超します。携帯電話で美しい写真が撮れるようになり、多くの人がカメラの必要性を感じなくなります。
デジタルカメラは、1999年当時、約500万台でした。その後、急増し、2010年に1億2000万台を超え、ピークを迎えます。ところが2011年から急激に減少し、わずか3年後の2013年には約6300万台と半減します。そして、2016年には2500万台まで落ち込みます。
特にコンパクト型のデジタルカメラについては、国内メーカーは次々と国内生産を休止し、海外に移転した生産拠点でも生産そのものが休止されました。その後は、ほぼ横ばいで推移していますが、それは一眼レフなど高級機だけになっているのです。大型家電量販店に出かけると、少し前までずらりと並んでいたコンパクトデジタルカメラがすっかり無くなっていることに驚くでしょう。
携帯電話がスマートフォンとして大きく変化するのは、2007年にアメリカで登場したiPhoneからです。日本でも2009年にはスマートフォンの普及率が10%程度だったものが、2013年には約63%となり、いわゆるガラケー(ガラパゴス携帯電話)を超す普及率になりました。そして、2015年には70%を超しました。
携帯電話とスマートフォンの違いは、インターネットの利用ができることです。スマートフォンになることで、インターネット利用の際のパソコンも飲み込んでいきます。
「最近は、学生がパソコンを使えない」と嘆く大学教員や会社経営者に会うことが多くなりました。正確には「パソコンが使えない」のではなく、「キーボードが使えない」です。筆者が担当する大学生の中にも、文章などの入力をする際に「キーボードからだと遅いので、スマホから入力しても良いですか」と聞いてくる人がいます。若い世代にとってスマホはパソコンの代替ではなく、スマホこそが生活に必要不可欠な道具そのものになっているのです。
こうした傾向は日本だけのことではなく、「若者は携帯でゲームばかりしている」というイメージも大きく変わりつつあります。