文部科学省の学校基本調査によれば、中学受験をする子供の数は増加傾向にあり、2018年度の受験者数は推定4万5000人に達したとされる。
子供の数そのものは減っているものの、中学受験を希望する人数が増え続けている故に、競争は激化。さらに、入試そのもののスタイルも、変革のときを迎えている。大手進学塾「市進学院」教務統括本部長の水野徹さんは「いちばんの変化は入試回数が増えたこと」と言う。
「特に中堅校において顕著です。1回限りの入試で受験生が集まるのは一握りのトップ校だけ。多くの学校は、定員やテストの内容を変えて平均4回の入試を行っています。
優秀な受験生を呼び込むために、難関校の試験が終わった後のお昼過ぎから入試を行う“午後入試”を実施する学校も多い。入試科目も英語を導入したり、“国語または算数だけ”といった単科型入試があったりとさまざま。中には複数回受験したうちのいちばん点数が高いものを組み合わせて判定する学校や、レゴを組み立てて自己表現を行う入試を実施する学校もある」
入試スタイルの多様化は、受験生にとっても新たなメリットを生み出している。『受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実』(新潮新書)の著者で教育ジャーナリストのおおたとしまささんが言う。
「これまで、中堅以下の学校の多くは、難関校の問題をそのまま易しくしたような問題を出題する傾向にあり、ある教科の成績がずば抜けてよくても、他がダメならば不合格でした。
しかし、入試スタイルが多様化したことにより、子供の能力を“新しい物差し”ではかれるようになった。12才の時点においての総合力を求めるのではなく、まだ未熟だけど、キラリと光るものを持った子供にも光が当たるようになりました」
受験競争はともすると「偏差値教育」という批判を浴びてきたが、すでに中学入試は“偏差値ではわからない”時代に突入しているのだ。実際、今の学校選びにおいて「偏差値」は以前ほど重視されなくなっているという。
また、昔は1校だけ偏差値の高い学校を受けて、ダメなら公立に進学する、いわゆる“記念受験”も多かったが、今はほとんど存在しない。1人当たりの受験校の数は増加傾向にあり、平均すると約6校に上るという。
「午前にテストを受けたらその足で午後の試験会場に足を運び、夜にはもう合否がホームページで発表されます。受験生たちはもちろん、その前から願書を書いたり、受験のスケジュールを組んだりする親御さんも本当に大変です」(水野さん)
孟母三遷(もうぼさんせん)。入試がいくら変わろうと、親が子供の教育に必死なのは、変わらぬようだ。
※女性セブン2019年2月28日号