同じ徘徊でも、進行したアルツハイマー型の徘徊は記憶障害の影響で「会社に行く」「子供を迎えに行く」などと思い込んで歩くが、前頭側頭葉変性症の徘徊は常同行動として理由なく黙々と歩く。
家族が認知症になったら、一般的なイメージとは区別して、本人と向き合う必要がある。
どの認知症も、それまでの本人とは言動や人柄が変わったりして、本人はもちろん、身近な家族も大きな動揺や不安を抱きがちだ。
「認知症は、その人本来の人格の上に病気が覆いかぶさるように発症します。レビー小体型認知症や前頭側頭葉変性症などは状態の把握が難しい上にBPSDが強く出て、介護者の負担が大きいケースも。また、代表的な認知症以外にも、多様な原因による多様な認知症があり、治療やケアも単純ではありません。
だからこそ家族は正しい知識を持ち、病気と本人の状態をよく理解した上で、向き合う必要があるのです」
そのためにも、認知症に詳しい医師や医療機関の選択が重要になってくる。
「認知症をきちんと検査、鑑別して診断し、適切な治療を行うためにも、認知症に関する充分な知識と経験を持つ認知症専門医や専門外来を受診するのが理想です。認知症薬や抗精神病薬などを駆使して症状を抑えるだけでなく、日常生活やBPSDへの対処法を専門の立場から親身にアドバイスできます」
しかし、まだまだ専門医の数が充分ではないのが現状だという。各自治体では専門医療機関・認知症サポート医・かかりつけ医の連携も整いつつあり、かかりつけ医認知症対応力向上研修も進められているが、必ずしも身近なかかりつけ医が認知症に精通しているとは限らない。
1つの医療機関で、病気の説明や生活相談への対応が充分でなければ、よりよい医師や医療機関を探しなおすのも、家族の役割かもしれない。
「認知症は、本人を中心に据えた医師と家族の二人三脚が大事。さまざまな症状にいちばん困惑しているのは本人ですから、『大丈夫、私たちがついているから安心して』という環境をつくることが、何よりのケアなのです」
※女性セブン2019年3月7日号