日清食品、1992年のCM
CMは日本人のみならず海外のクリエーターにも評価され、日本初のカンヌ国際広告映画祭グランプリを受賞する。
「人類の食欲という壮大なテーマを、アニメの『トムとジェリー』のような誰が見ても理解できる、万国共通のユーモアで描いたことが海外の人たちにも受け、受賞できたのだと思います」
中島氏は、アーノルド・シュワルツェネッガーと宮沢りえが出演した武田薬品工業の「アリナミンV」、ホンダの「ステップワゴン」、サントリーの「DAKARA」の小便小僧シリーズや「燃焼系アミノ式」など、視聴者の目を釘付けにするCMを作ってきた。テレビしかなかったのが1990年代なら、「テレビ以外にもあるぞ」が2000年代、「テレビよりこっちじゃないか」となったのが2010年代だとも語る。
「テレビ番組が浅草寺なら、CMは仲見世みたいなものです。いろんな店があって、覗いて楽しいほうがいい。小さな子供はビールという大人の飲み物があるんだと知れるし、男の子は女性が化粧をすることを知ることができる。今はネット上に多様なコミュニティがあるけれど、他の世界に目を向けなくなっているような気がします。いろんな世界があるんだよねってことを共有するためにも、テレビにはパブリックメディアとしての役割があるんじゃないでしょうか」
ちなみに「hungry?」と問う力強い声は、阪急ブレーブスを引退したアニマル・レスリーが担当。
●なかじま・しんや/1959年生まれ。CMディレクター、東北新社取締役、武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科・デザイン情報学科客員教授。武田薬品工業「アリナミンV」、サントリー「DAKARA」「燃焼系アミノ式」「伊右衛門」など、ビジュアルインパクトの強いCMを得意とする。
※週刊ポスト2019年3月8日号