「自筆証書遺言」はこう変わる
相続で事業継承などが阻害されないために、7月からは遺留分の制度が見直され、次男や三男の遺留分請求に1000万円ずつ現金で支払えばいい制度になる。長男に支払う金がなければ分割払いでもよく、商売に必要な店舗などを共有名義にする必要はなくなる。
ここで問題になるのが、不動産の評価額だ。不動産の評価額には複数の基準がある。長男にすれば、できるだけ評価額が低い方が弟たちに支払う金額が少なくて済む。それに対して次男や三男はできるだけ高い評価額で見積もった方が相続の取り分が増える。
長男「評価額は6000万円だ」
次男・三男「このあたりは地価が上がっているから1億円近くで売れるはずだ」
といった争いが起きる。
「注意しなければならないのは、相続税の計算に使う不動産評価額は実勢価格の8割ほどに設定されていますが、遺留分は相続が発生した時の時価、つまり『実際の売買価格を基準に評価する』と定められていることです。
この基準の違いから、弟たちが自分の取り分を多くするために不動産鑑定士を雇って高額な鑑定価格を出してくることがある。そうした場合、兄は相手の評価額を鵜呑みにせず、自分でも別の不動産鑑定士に算定してもらうのが賢明です」(円満相続税理士法人代表の橘慶太氏)
実際、2つの鑑定の中間をとって合意したケースが少なくないという。
※週刊ポスト2019年3月8日号