◆人と違うことに寛容になる
桜丘中は、障害がある生徒や、もともと不登校だった生徒も積極的に受け入れている。そもそも社会にはいろいろな人がいて、人はそれぞれ違うということが当たり前だとわかれば、自分と違う他人に寛容になれるという考えがあるからだ。だが、その取り組みも、最初からすんなりスタートできたわけではない。
4年前、インクルーシブ教育(障害のある人とない人が同じ場所で学ぶのみならず、誰もが自由な社会に効果的に参加できる社会の実現をめざす教育)を導入しようとしたところ、「そんなことしたら、勉強ができなくなる」と保護者から猛反対されたことがあった。ならば、学校全体の成績をあげて納得させようと考えた西郷校長は、わかりやすく実践的な授業を次々、導入していく。そして冒頭で説明したとおり、今や同校は区でもトップクラスの成績を収めている。
英語教育には特に力をいれ、すべてを英語だけで他の教科の勉強をしたり、作業をするCLIL(Content and Language Integrated Learning、内容言語統合型学習の略。教科やトピックなどの『内容』と『言語』を融合して学ぶ教育方法。1つのテーマをさまざまな角度で扱いながら、互いが意見などを交換し合い、言語を身につけていくこと)を導入している。
「英語なんて、実はしゃべれなくても社会ではどうにでもなるよね」と笑いながらも、「でもね」と西郷校長はこう続けた。
「海外から翻訳されて日本で発信される出来事やニュースは、発信する側のバイアスがかかっていることもあれば、すべてでもない。英語がわかるようになると、本当は世界のあちこちでそのニュースがどう発信されているのか、自分で判断できるようになる。その意味で英語を身につけてもらいたいのです」
※女性セブン2019年3月14日号より一部抜粋