芸能

映画『翔んで埼玉』 毀誉褒貶の漫画実写化でもヒットした理由

映画『翔んで埼玉』は漫画実写化の成功例

 映画『翔んで埼玉』が絶好調だ。このところ、漫画原作の映画化というだけで敬遠されることもあるなか、人気を集めている。漫画の実写映画化が珍しくなくなり、今では逆に「また漫画実写」とうんざりされることも少なくないなか、なぜ『翔んで埼玉』は好意的に受け止められ、成功を収めているのか。一方で、制作陣の熱意が空回ると話の焦点も俳優の魅力も消えた客が迷子になる映画が完成することがあり、漫画実写化はその迷子を発生させやすい。そんな「迷子の映画」探しをライフワークにするライターの北原利亜氏が、映画『翔んで埼玉』の成功について考えた。

 * * *
 漫画原作の映画化には、どうしても逃れられない宿命がある。当たり前のことだが、漫画と映画は、どうやってもまったく同じビジュアルにはならないからだ。だから漫画を実写化するときは、その違いをなるべく目立たせないように原作原理主義でゆくか、骨格だけ残して作り替えるかの決断を迫られる。映画『翔んで埼玉』は、原理主義と作り替えをうまく組み合わせて成功している。

 人気のヒット作品であるほど、作り替えに対しては強い違和感を観る者に与えてしまう。ところが、その点でいえば『翔んで埼玉』は幸運だった。原作が未完だからだ。

 1982年~1983年に描かれたこの漫画は未完のまま1986年に単行本収録され、SNSで話題になったことをきっかけに2015年に復刊したときも完結しなかった。そのため、物語を語り終えることに対する歓迎ムードが強いなか、実写映画が公開された。一応の完結作品を目指す実写化では、原作で語られていない部分を追加した物語となっている。

 とはいえ、原作に無い部分を追加した映画に対しては、強い拒否反応が起こることもある。それは、元の世界観やキャラクターが、原作の世界観から逸脱したときに限って起きる。ところが『翔んで埼玉』の場合は、美術や衣装、キャスティングや演技などを細かく積み重ねることであり得ないはずの世界の構築に成功したため、受け入れやすくなっている。

 原作漫画によれば、主要な登場人物はいずれも目鼻立ちがはっきりとした造形の顔だ。そして、美少年が登場するコマには大量のバラの花が背景に描かれ、墨塗りが多く、全体的にダークでデコラティブな装飾が多い。それにのっとって、主人公の二人、壇ノ浦百美(二階堂ふみ)と麻実麗(GACKT)だけでなく、衣装はどれも細部まで装飾が施されメイクもメリハリ強め、凝ったディテールが積み重ねられている。さらに、主人公二人が出会う白鵬堂学院は宮殿のようで至る所に本物のバラの花が飾られ、百美の自室ベッドは天蓋つきだ。

関連記事

トピックス

嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
SNSで「卒業」と離婚報告した、「第13回ベストマザー賞2021」政治部門を受賞した国際政治学者の三浦瑠麗さん(時事通信フォト)
三浦瑠麗氏、離婚発表なのに「卒業」「友人に」を強調し「三浦姓」を選択したとわざわざ知らせた狙い
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン