「街角での声かけスカウトばかりではありません。今はツイッターやインスタを使うスカウトが横行しています。実態のないプロダクション関係者が、片っ端から女の子のアカウントに声をかけると、中にはコロッと騙される子もいる。その女の子がSNSのプロフに“××プロダクション所属”などと書けば、はたから見れば本当にそんなプロダクションが存在するんだと思われてしまう」(増田さん)
以前も、インチキな芸能プロダクションは星の数ほどあった。しかし、若い女性たちの意識も高まり、ネット上にはそうした悪質な芸能事務所が名指しで書き込まれる。前出のエイミさんがもっとも気にするのは、声をかけてきた芸能スカウトの所属会社が本当に実在するか、所属タレントやモデルが実際に活動しているのかである。ネットを使えば容易に確認できるかもしれない。しかしこれらは、同じようにネットを使えば簡単にでっち上げることができてしまうのだ。
この手軽さゆえ、失敗しても、何度でも仕事復帰してくる者もいる。
「かつて代表が逮捕された芸能プロダクションX社が、最近復活したと業界内で噂されています。ホームページも作られていて、所属タレントもいる。しかし、この所属タレントのSNSなどを確認すると全く実績のない子ばかり。X社にほとんど関係のないファッションショーの写真や、有名タレントの写真が無断で使用されており、これを信じてX社からのスカウトに応じてしまう子が出るのではないか…。いや、すでに応じてしまっている子が複数いる。また“同じようなこと”が起きないか、注視しています」(増田さん)
実は筆者も、このX社については取材済みだ。代表の男性は、所属事務所の女性からレッスン料などの名目で一人数十万から数百万を取り上げ、立場を使い肉体関係の強要、風俗店へ女性を斡旋したりしていた。しまいには児童福祉法違反で逮捕され、会社は破産に追い込まれた。男性は「もう芸能関係の仕事はしない」と裁判で宣言し、なりを潜めていたが、ここ最近、協力者の名前を使って、新たに芸能事務所を立ち上げたのだ。ホームページを見ると、事務所のとして実績がゼロなのにもかかわらず、これまで書いたような”でっち上げ”の手法で、いかにも「まっとうな芸能事務所」を装っている。
春は、新高校生や新大学生を狙ったスカウトが横行する季節でもある。自身が、そして身近な大切な人がこうした連中に取り込まれないようにするためにも、相手方の”手口”を知っておくということは非常に大切な防衛手段なのだ。