グルメドラマとしての期待も高い『きのう何食べた?』は西島秀俊と内野聖陽W主演でも話題

◆共感がなきゃダメ

――先ほど話題に出た『みんな!エスパーだよ!』は超能力、2019年1月クールの『フルーツ宅配便』はデリヘルの話など設定はエッジの利いたものだが、登場人物の心情は立場の違う人間が観ても「共感できる」「わかりやすい」ものが多い。

阿部:テレビなので驚かせないといけない。驚いて初めて感動が出てくるというか、驚きが感動に繋がってると思っているので、そこはみんな、そういう意識でやってるんじゃないかと思いますね。

「共感される」という点は監督の作家性が出ている部分だと思うんですが、やっぱり伝わらないといけない――でも、共感ってすごく作るのが難しい。その言葉自体を嫌う社会の風潮みたいなものが、今はあります。でも作り手としてマスに向けて発信している以上、テレビっていうのは「共感がなきゃダメだな」って僕自身は思っていますね。

――原作再現度の高いキャスティングが大きな話題になっている『きのう何食べた?』は男性カップルの話だが、いわゆるBL(ボーイズラブ)ではなくグルメドラマの側面や “相手を思いやって暮らす”という「日常」を描いている印象。

阿部:連載当初から「美味しそうに、ごはんを作るな」って思って見ていました。うちの母親とかも読んでいて、よしなが先生の絵のタッチもすごくきれいなので、とても読みやすい作品です。

 現場の熱量は、すごいですよ。もちろん大変さはありますけど、みんなすごく一生懸命「この作品を成功させよう」としている。やっぱり、よしなが先生の原作がすごくしっかりしているので、「それを損なうような作りをしてはダメだ」っていう意識はありますし、だからこそのキャスティング。現場全体から「クオリティ高いものをみんなで作ろうぜ」っていうのを強く感じますね。

◆「主人公はごはん」と言う松重豊

――テレビ東京でグルメドラマというと、『孤独のグルメ』シリーズ(2012年~)を思い浮かべる人も多い。

阿部:『孤独』のチームがすごい優秀だと思うのは、ごはんの撮り方がすごく上手くて――完全にドラマのスタッフが作っていたら、あの作品はできなかったと思うんですよ。元々は情報バラエティの溝口(憲司)監督だからこそ、たっぷり、きれいに見せる――そこが主人公なんだって撮り方。

 これは主演の松重豊さんも言っていたことですが、「このドラマの主人公は、ごはんだから。俺はそれを引き立てるために“どう美味しそうに食べるのか?”っていうことでしかないから」って、その割り切りがあったから『孤独』は成功したんだと思います。

 実は『深夜食堂』(TBS系、Netflix)と『孤独』以外、大当たりしたグルメドラマってそうないので、どれだけ難しいか…ってこと。『きのう何食べた?』も、大きな可能性があると思ってるんですけど、観ていただかないと育たないので、本当に一人でも多くの人に観てもらいたいですね。

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