延命治療をする?しない?決断の流れ
実際の延命治療は、苦痛を伴うものが多い。江別すずらん病院認知症疾患医療センター長の宮本礼子医師が言う。
「延命治療を選択した場合、意識のない状態で寝たきりの人生を送ることになります。自力で喀痰を排出できない場合には、喀痰吸引や気管切開部のチューブ交換が行なわれ、それは患者に耐えがたい苦しみをもたらします。また、胃ろうや経鼻胃管などでは患者がチューブを抜いてしまうのを防ぐため、四肢や体幹を拘束されるケースが多いのです」
事実、多くの人は延命治療を拒否する意思を持つ。厚労省の「人生の最終段階における医療に関する意識調査」(平成29年度)によると、末期がん治療での「経鼻栄養」は望むが9.8%、望まないが64.0%、「胃ろう」は望むが6.0%、望まないが71.2%、「人工呼吸器」は望むが8.1%、望まないが65.2%と、望まない人の方が圧倒的に多い。長尾医師が指摘する。
「高齢者の多くは『人生の最期を管だらけの身体で迎えるのは嫌だ』と思っています。私は2000人以上の患者を看取りましたが、延命治療を希望せずに自然な最期を選択した末期がんや老衰の方はみな穏やかな最期を迎えました。そうした死を実現するためには、元気なうちから準備しておく必要があります」
※週刊ポスト2019年4月12日号