「あまり大きな声ではいえませんが、家庭訪問は“親を知る”貴重な機会ともいえます。問題行動を繰り返す児童の家庭環境がどうなっているかとか、怒りっぽくてモンスターペアレントになりそうな保護者を事前に把握しておくことも学校にとっては大切です。
普段、まったく学校行事に参加しない親が子どもを虐待していたり、子ども同士のケンカなどで突然、学校に怒鳴り込んできたりするケースはよくありますからね」
教育評論家の石川氏も、学校側と保護者でまったく連携ができていない昨今の教育現場を憂う。
「PTA参加の是非が社会問題になっていることもそうですし、いま学校側と保護者のコミュニケーションが取りにくい時代になっていることは間違いありません。だから、何か問題が起きると、お互いを知らないばかりか温度差があるので余計に感情論でこじれてしまうのです。
しかし、千葉県野田市の小4虐待死事件みたいな大事件が起きてからでは遅い。学校と生徒だけの関係ではなく、家庭も含めたトライアングルの連携をしっかり機能させ、そのうえで問題を起こす児童や不登校の生徒に対しては児童相談所や民生委員などの協力を仰ぐ。そうした努力も教育現場に課せられた大事な役割なのです」(石川氏)
前出の神奈川県在住の40代女性は、こんな不安を口にする。
「いまはクラス替えで担任が変わっても経験の浅い非常勤講師ということもよくありますし、そもそも個人情報保護の関係で、親の連絡先ばかりか新しいクラスメイトの名簿すら配られません。
子どもが小さければ友達の教科書や体操着などを間違って持ち帰ってしまうこともよくあることですが、謝罪したくても親の電話やメールも知らないので学校に連絡するほか方法はありません。そんな時、先生が相手の保護者と連携をうまく取れずに対応が遅れれば、親同士がギクシャクしてしまう場合だってあるんです」
教師と保護者双方の多忙な時間を削り、無駄な気遣いをする必要もなくなる「家庭訪問の廃止」は時代に即した策といえる。だが、それに伴うコミュニケーション不足を補えなければ、かえって大きな労力を費やす事態になりかねない。