さらに長岡氏は当時新進のアレンジャーだった武部聡志氏を起用し、『卒業』『初戀』『情熱』の“漢字二文字”の3部作を作り上げる。

「京平さんから『このプロジェクトは詞先でいこう。そうすれば松本くんが素晴らしい詞を書いてくれるよ』と提案されたので、松本さんにそうお願いしたら『まずタイトルを決めましょう』と。それでご自宅にお邪魔して徹夜で話し合ううちに『初めてで最後のものがいいよね』ということになって『卒業』や『初戀』というタイトルが出てきたわけです」

 1980年代は毎年春に一推しのアイドルが各社から出ていたが、斉藤はひと足早く2月にデビュー。それは「先陣を切った方が有利だろう」という長岡氏の計算だった。果たして『卒業』は発売2週目でトップ10入り。その後もヒットを連発した斉藤は、シングルもアルバムも新人でナンバーワンの実績を残す。キャッチフレーズは「時代だって、由貴に染まる。」だったが、その通りになったわけだ。

「実は『卒業』のサビに入る前の『ああ』という歌詞は、最初はなかったんです。でも歌入れの時に京平さんの提案で入れてみたら、すごくよくなって」

 スタッフの英知の結晶である『卒業』は今も歌い継がれるスタンダードソングになった。

【プロフィール】ながおか・かずひろ/1951年生まれ。キャニオン在職中は石川ひとみ、斉藤由貴、中島みゆきらを担当。現在はフリーの音楽・映像プロデューサーで、長崎県大村市「シーハットおおむら」の館長も務める。

取材・構成■濱口英樹

※週刊ポスト2019年4月26日号

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