国内

今も残る踏切廃止問題 「総論賛成」でも実行が難しい理由

開かずの踏切だった2010年当時の小金井街道踏切(時事通信フォト)

 1998年に起きた踏切事故は487件、負傷者179人、死者130人だったが、設備の整備等により、2017年は事故件数237、負傷55人、死者101人まで減少している。ただ近年は、減少傾向は続くものの足踏み状態も続いている。踏切廃止に対しては圧倒的に賛成意見があつまるものの、いざ実行しようとすると、様々な問題で停滞している現状について、ライター小川裕夫氏がレポートする。

 * * *
 4月13日、京成電鉄の船橋競馬場前駅に隣接する踏切の遮断桿をノコギリで切断したとして、近所に住む男が器物破損の容疑で逮捕された。

 当日、京成電鉄は事故で電車が止まっており、その影響で踏切がずっと閉まったままの状態だった。それに苛立ったことを理由に遮断桿を切断したと、容疑者は供述している。

 開かずの踏切は社会問題としてたびたびクローズアップされるが、単発のネタとしてすぐに収束してしまう。それだけに繰り返し社会問題になるのだが、ここ数年でもっとも大きく開かずの踏切が社会問題視されたのは、2005年だった。当時、政界からも開かずの踏切への言及があり、開かずの踏切が国政レベルで議論されたのだ。

 このとき、口火を切ったのは小泉純一郎総理大臣(当時)だった。小泉総理からは「開いている踏切でも直前で一時停止することが開かずの踏切問題を深刻化させている」との指摘が出た。総理大臣の指示を無視することはできず、踏切前での一時停止をしなくてもいいように道路交通法の改正が検討された。しかし、警察庁は安全の確保が難しいことを理由に法改正には至っていない。

 急いでいるとき、開かずの踏切に苛立つ気持ちは十分に理解できる。とはいえ、踏切は歩行者や自動車を守るための設備。踏切を破壊すれば、鉄道のスムーズな運行が阻害されるだけではなく、歩行者・自動車といった踏切を渡ろうとする人たちも危険に晒される。いくら長時間待たされたからとはいって、その不満を踏切にぶつけるのはお門違いも甚だしい。

「京成電鉄には、開かずの踏切と呼ばれる踏切がいくつかあります。立地的な問題や行政との協議内容にもよるので一概には言えませんが、できるところから解消するように努めています」と話すのは、京成電鉄経営統括部広報・CSR課の担当者だ。

 東京圏・大阪圏といった大都市圏では、高架化・地下化が急速に進められている。近年は、積極的に連続立体交差に取り組む自治体もある。絶滅寸前とまでは言えなくても、開かずの踏切は急速に数を減らしている。

 京成線を例にすると、京成曳舟駅の隣にある踏切は幹線道路の明治通りを遮断していた。一回の遮断時間は長くなくても頻繁に閉じる。明治通りは東京でも屈指の交通量を誇っている。頻繁に閉じる踏切によって、この踏切前後では渋滞が慢性化していた。

 こうしたことから、京成曳舟駅の横にある踏切を廃止し、高架化が進められた。2015年、同踏切は高架化が完成したことによって消滅。いまや、開かずの踏切だった面影は残っていない。

 京成電鉄では、そのほかにも連続立体交差事業を進めている区間がある。

「現在、京成電鉄で取り組んでいる立体交差事業には押上線の四ツ木駅―青砥駅間があります。ここは、葛飾区が京成立石駅前で再開発を進めていることもあり、それと同時に高架化に取り組んでいます」(同)

 今回の事件現場になった踏切は、実のところ開かずの踏切として問題視されていたわけではない。事故が起きて電車が止まったことで、偶然にも開かずの踏切と化してしまったに過ぎない。

 同踏切よりも遮断時間が長く深刻な踏切は、東京23区内でも5か所以上存在する。

関連キーワード

関連記事

トピックス

『ザ!鉄腕!DASH!!』降板が決まったTOKIOの国分太一(右/番組の公式サイトより)
《スタッフに写真おねだりか》TOKIO・国分太一は「コンプライアンス上の問題行為が複数あった」…日本テレビに問い合わせた結果
NEWSポストセブン
”アナウンサーらしくないアナウンサー“と評判
「笑顔でピッタリ腕を絡ませて…」元NMB48アイドルアナ・瀧山あかねと「BreakingDown」エース・細川一颯の“腕組み同棲愛”《直撃に「まさしくタイプです(笑)」》
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一
《日テレで緊急会見の意味は》TOKIO国分太一がコンプラ違反で活動休止へ 「番組降板」「副社長自らスキャンダル」の衝撃
NEWSポストセブン
悠仁さまの大学進学で複雑な心境の紀子さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、今年秋の園遊会に“最速デビュー”の可能性 紀子さまの「露出を増やしたい」との思いも影響か
女性セブン
グラビアのオファーも多いと言われる中川安奈アナ(本人のインスタグラムより)
《SNSで“インナーちらり笑”》元NHK中川安奈アナが森香澄の強力ライバルに あざとキャラと確かなアナウンス技術で「ポテンシャルは森香澄以上」との指摘
週刊ポスト
不倫が報じられた錦織圭、妻の観月あこ(Instagramより)
《錦織圭・モデル女性と不倫疑惑報道》反対を押し切って結婚した妻・観月あことの“最近の関係” 錦織は「産んでくれたお母さんに優しく接することを心がけましょう」発言も
NEWSポストセブン
お疲れのご様子の雅子さま(2025年、沖縄県那覇市。撮影/JMPA) 
雅子さまにささやかれる体調不安、沖縄訪問時にもお疲れの様子 愛子さまが“異変”を察知し、とっさに助け舟を出される場面も
女性セブン
不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《美女モデルと不倫》妻・観月あこに「ブラックカード」を渡していた錦織圭が見せた“倹約不倫デート”「3000円のユニクロスウェットを着て駅前チェーン喫茶店で逢瀬」
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《永野芽郁に新展開》二人三脚の“イケメンマネージャー”が不倫疑惑騒動のなかで退所していた…ショックの永野は「海外でリフレッシュ」も“犯人探し”に着手
NEWSポストセブン
“親友”との断絶が報じられた浅田真央(2019年)
《村上佳菜子と“断絶”報道》「親友といえど“損切り”した」と関係者…浅田真央がアイスショー『BEYOND』にかけた“熱い思い”と“過酷な舞台裏”
NEWSポストセブン
不倫が報じられた錦織圭、妻の元モデル・観月あこ(時事通信フォト/Instagramより)
《結婚写真を残しながら》錦織圭の不倫報道、猛反対された元モデル妻「観月あこ」との“苦難の6年交際”
NEWSポストセブン
2人の間にはあるトラブルが起きていた
《浅田真央と村上佳菜子が断絶状態か》「ここまで色んな事があった」「人の悪口なんて絶対言わない」恒例の“誕生日ツーショット”が消えた日…インスタに残された意味深投稿
NEWSポストセブン