例えば、東武伊勢崎線の北千住駅や竹ノ塚駅に隣接する踏切は、早朝・夕方などのラッシュ時間帯で開かずの踏切と化す。そのため、行政・鉄道会社が協力して立体交差工事を進めている。また、東武東上線でも立体交差工事が始まっており、開かずの踏切が解消される見込みになっている。
東武鉄道は、このほかの区間でも開かずの踏切を解消するべく、高架化工事を実施している。東武は2014年から高架化工事の進捗状況を定期的に報告するパンフレットを作成しており、開かずの踏切問題には真摯かつ丁寧に対応している。
長らく開かずの踏切として悪名高かった中央線の三鷹駅―立川駅間も2010年に立体交差化を完了。現在は高架下空間を商業店舗やコワーキングスペース、公園、駐車場といった形で活用している。
開かずの踏切であろうとなかろうと、とにかく踏切そのものを廃止する。鉄道会社も行政も、そして社会全体の意識も踏切廃止の方向に向かっていることは間違いない。
しかし、踏切を廃止する立体交差は、1:線路を高架化する2:線路を地下化する3:線路の上に道路を通す4:線路の下に道路を通すの4パターンがある。
立体交差化4パターンはそれぞれに一長一短あり、鉄道会社・地元自治体・地元住民の3者間でメリット・デメリットも異なる。どれを選択するのか? これで3者の議論がまとまらずに長引く一因にもなる。
1は景観の問題から周辺住民が反対するケースが目立つ。特に、住宅地の場合は高架化に対して強烈な反対が起こる。自分が住む家屋の頭上を常に電車が走ることは気持ちがいいものではないし、高架線が家屋より高い場所に建設されなかったとしても家の中を覗かれているという不快感もある。
2は工費や維持費の負担が大きくなるため、地元自治体や鉄道事業者が消極的になるパターン。3と4は歩行者や自転車の往来が不便になるため、「踏切が廃止されて、逆に不便になる」といった理由で地元住民や地元自治体から反対が出やすい。
開かずの踏切問題は、地域差や個人の行動範囲・生活実態・使用頻度・受益による感じ方の差が大きい。そのため、「踏切廃止には賛成」だが「そのやり方には反対」という総論賛成・各論反対に陥り、立体交差化の計画から工事に至るまでが紛糾する。
開かずの踏切は東京圏・大阪圏といった大都市圏を悩ます問題だが、2005年に議論が始まってから、大幅に改善されている。