それどころか、「親日派の子孫」というだけで社会的攻撃対象になり得るのが韓国だ。
例えば、韓国の政治家たちの中には、祖父、あるいは父親が親日行為をしたという理由で選挙において競争候補から攻撃されるというケースも珍しくない。保守だけでなく、「進歩」あるいは「革新」と呼ばれる左派の人々さえも、旧時代の悪習を積極的に活用するのだ。実のところ、「親日派の子孫」という攻撃材料を伝家の宝刀のように振りかざし続けてきたのが、まさに韓国の進歩勢力なのだ。その宝刀の矛先が向けられた人の中でもっとも有名な人が、朴槿恵前大統領だろう。
朴槿恵前大統領の父、朴正熙元大統領は日本統治時代、満州国軍将校だったという理由で政治家となった当初から反対勢力から攻撃を受け続けてきた。朴槿恵は政治の世界に入ったそのときから、有力な政治家として注目されていたが、たびたび「親日派の娘」として攻撃を受けてきた。また、彼女が政界に足を踏み入れなければ、2000年代中盤に起こった「親日人名辞典」などを含む一連の反日騒動は起こっていなかったかもしれない。
2004年、韓国では「過去の清算」という名分のもと親日派のリストアップ作業が行われた。その作業は、2005年に発足した大統領直属の「親日反民族行為真相糾明委員会」という組織が行ったが、それとは別に民間機関である「民族問題研究所」も独自の親日派分類作業を始めた。「民族問題研究所」は国民に「親日派の清算」を訴えながら募金活動を行ったが、わずか十日間で目標金額の5億ウォンが集まるほどの国民的な支持を得た。
2009年、それぞれのリストが発表された。日本の陸軍士官学校を卒業し満州国軍の中尉で終戦を迎えた朴正熙は、政府機関である「親日反民族行為真相糾明委員会」の親日派リストには載らなかったが、民間機関である「民族問題研究所」のリストには載っていた。前者は具体的な親日行為が確認できないという理由で、後者は「少尉以上の軍人」という基準によるものだった。
しかし韓国メディアは国民の寄付と支持が寄せられた後者のリストを重視し、結果的に世間に「朴正熙=親日派」というイメージが定着するようになった。そして、それが保守派の政治家として人気上昇中だった朴槿恵に「親日派の娘」というマイナスイメージとして作用したのはいうまでもない。
※崔碩栄・著『韓国「反日フェイク」の病理学』(小学館)より一部抜粋
【プロフィール】チェ・ソギョン/1972年、韓国ソウル生まれ。高校時代より日本語を勉強し、大学で日本学を専攻。1999年来日し、関東地方の国立大学大学院で教育学修士号を取得。大学院修了後は劇団四季、ガンホー・オンライン・エンターテイメントなど日本の企業で、国際・開発業務に従事する。その後、ノンフィクション・ライターに転身。著書に『韓国人が書いた 韓国が「反日国家」である本当の理由』、『韓国人が書いた 韓国で行われている「反日教育」の実態』(以上、彩図社)、『「反日モンスター」はこうして作られた』(講談社)などがある。