きゅっきゅぽんという女性マンガ家の『星間ブリッジ』は、戦時中上海に渡った少女と支那人少年の友情物語だが、登場人物たちは最初から最後まで「支那人」と口にしている。当然のことである。
野田サトル『ゴールデンカムイ』は、明治期の元軍人とアイヌの少女の物語で、やはり昨年手塚治虫文化賞大賞を受賞した。冒頭、主人公はこううそぶく。
「露スケの白いケツをかじってでも俺は生き抜いてやる」
これは免責注なしである。
出版界は何を恐れているのか。以上挙げた作品は全部名作である。
●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。近著に本連載をまとめた『日本衆愚社会』(小学館新書)。
※週刊ポスト2019年5月17・24日号