国内

差別語の不可解、ノートルダム大聖堂の火災事故で想起

評論家の呉智英氏

 放送で使用が禁止されていたり、新聞や出版物で使われることが推奨されない言葉がある。いわゆる「差別語」とされるものだ。評論家の呉智英氏が、パリのノートルダム大聖堂火災事故のニュースに接して喚起された、差別語の不可解について論じる。

 * * *
 ノートルダム大聖堂の火災事故を報じる四月十六日付朝日新聞夕刊を読んで、私は思わずにやりと笑った。大聖堂の解説にこうあったからだ。

「『ノートルダムのせむし男』など、映画の舞台にもなった」

 朝日新聞は三十年ほど前にはこれが書けず、『ノートルダムの男』という珍妙なゴマカシ表現をしていたのに。映画の原題はHunchback of Notre Dameである。

 この有名な映画は、マンガにも翻案されている。ちばてつやのデビュー作『復讐のせむし男』である。十七歳の少年の作品とは思えない出来栄で、後の活躍を予言しているようだ。しかし、これは長く復刻されず、二〇〇三年に復刻された時も、書評では全く取り上げられなかった。

 そのちばてつやの『ひねもすのたり日記』は、昨年手塚治虫文化賞特別賞を受賞した興味深い自伝マンガだが、その中に気になる記述がある。ちば少年は家族とともに満洲で終戦を迎え、ロシヤ兵や支那人暴徒に怖い目に遭う。日本人の工場長がこう言う。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト