さらにネット民たちは、父親こそに問題があると、その経歴をすぐさま掘り起こした。『あきらめる勇気』という自己啓発の本を出版しているので比較的容易に分るのだが、父はかつて暴走族の副総長で、恐喝、窃盗、傷害、シンナー、麻薬、覚醒剤など数限りない悪行を重ねて来たとか。職を転々とした後に、日本メンタルヘルス協会の衛藤信之氏という怪しげな心理カウンセラーと出会い、自らもその職に就くのだが、これまでに『たったの21日で禁煙を成功させる方法』という情報商材を販売していた過去もあるようだ。息子との親子講演会をけっこうなチケット料をとって開催、息子を編集者の箕輪厚介氏や茂木健一郎氏といった有名人に引き合わせて話題作りを狙うなど、なかなか商魂たくましい。
最新のユーチューブでは、「不登校のゆたぼんがアメリカンビレッジでフリーハグ」と題する動画を流していた。大炎上中にまた燃料投下するようなことしている、このチャンネルは新手の炎上商法か、と疑いたくなる。
ただ、執筆現時点でこの動画に対する高評価は541、低評価は5680。もっとも再生回数の多かった5月5日公開の「【新聞載った!】ゴールデンウィーク終わっても学校行くな」に至っては、高評価4202に対し、低評価は6.6万だ。コメント欄には33200の書き込みがあり、荒れに荒れて、商売どころじゃない状態となっている。
困った話だが、父親はもともとそういう人なのかもしれない。自己啓発の入った元ヤンキーで何でもありなネット商売で生きる人。減りつつあると言っても日本の人口は1億2千万。それだけいれば、こういう人も混じって当たり前。そう突き放すのがもっとも正しい外野の態度のようにも思える。
しかし、これは虐待だという声が多いように、まだ10歳の息子当人が気になる。これからどんな青年、どんな大人に育つのかは彼や彼の家族の勝手だが、私が気になるのはこの大炎上を本人がどう感じているか、だ。動画のコメント欄やツイッターの関連ツイートなどを、どう読んでいるのだろう。親が「アンチはロボットと同じだからな」と言い聞かせているかもしれない。だとしても、実名顔出しでここまで世間から袋叩きされた事実は、きっと深いところで傷となる。傷にもならないのならそれはそれで精神構造がおかしすぎる。
具体的に何があって何を思ったのかは知らないが、学校が辛かったなら、転校すればいい。しばらく休んで、クラス替えを機に再登校するでもいいのである。要は、学校は選べるのだ。だが、子供は自分の親を選べない。このような父親のもとに生まれ育ったことは変えられない。その理不尽な現実を動画の画面が表しているようで、痛々しく、この騒動を見ていて私は辛い。
ひとつ確認しておきたいのは、そんな父子の合作である「少年革命家ゆたぼんチャンネル」も、今年の5月5日が来る前までは、ひっそりとした辺境チャンネルの一つにすぎなかったことだ。登録者数は数百で、動画の閲覧数も内輪が見ているプラスα程度だったようだ。
それが5月5日に、先に引用した琉球新報の記事で変わった。オンラインでも流され、大拡散した。記事のタイトルは〈「不登校は不幸じゃない」10歳のユーチューバー 沖縄から世界に配信「ハイサイまいど!〉である。沖縄に天才現る!とでも言いたいかのような、完全持ち上げ記事だ。