芸能

『しくじり先生』ネット版を見てわかった「テレビの闇」

しくじり先生の教えにうなづく若林(イラスト/ヨシムラヒロム)

しくじり先生の教えにうなづく若林(イラスト/ヨシムラヒロム)

 テレビで放送された番組をネットで見逃し再生する視聴方法が広まっている。放送されたままを楽しむのが通常だが、『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)は、AbemaTVで“完全版”と題したロングバージョンを視聴できる。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、地上波からネットに移動することで変容する“しくじり”について考えた。

 * * *
「私は『しくじり先生』が好きだ」

 祖母がこう話した。数年前に祖父が亡くなって以降、独り身。話し相手となるために時折、祖母の家に足を運んでいる。90歳となる祖母と32歳の僕、共通の話題といえばテレビ。共にハードなテレビウォッチャーなので、なかなか盛り上がる。そのなかで『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日)の話題となったのだ。

 続けて「けど、アレ終わっちゃったでしょ」と祖母。その場でwikiをチェックすれば、レギュラー放送は2017年9月で終了と記載されていた。僕は「うん、終わったね」と伝える。

 祖母が愛してやまない番組『しくじり先生』が1年半の休眠期間を経て、今年4月に復活した。新作はAbemaTVと連動しており、未公開シーンを含めた「完全版」が配信されるとのこと。ふと観たことはあったが、しっかり観たことがない番組。いい機会なので、仕事中のBGMとして流すことにした。しかし、耳に入る音声があまりにも面白い。途中からイラストを描くことをやめ、鑑賞がメインとなっていた。

 以降、僕は『しくじり先生』にハマった。テレビ朝日版とAbemaTV完全版の両方を鑑賞している。2つのバージョンを見比べて、地上波でカットされた部分を探す。これが楽しい。

 全ての授業が興味深いのだが、なかでも印象に残ったのは#3。教壇に立つのはタレント・水沢アリー先生。美容整形やキャラ詐称、その無理がたたって精神的なバランスを崩したことを教授していた。

 なぜ、この回が印象に残ったのか?

 それはテレビ朝日版とAbemaTV完全版で視聴後の感想が変わる点にある。前者だけを観れば、水沢先生が話す「しくじり」の数々が他人事に映る。おバカタレントが選択ミスをしただけじゃん、なんて思うだろう。しかし、後者を観れば同情の念を禁じ得ない。タレントに夢を見た女性の成功と挫折が胸に刺さる。全てを自己責任だと話す水沢先生、その切なさったらないわけで。

 AbemaTV完全版だけで観られたのは、水沢先生がテレビディレクターの度を越した要望に悩まされたと語るシーン。「ネットニュースになるようなネタはない?」「放送できるギリギリのネタない?」と炎上すれすれの発言を求められ続けたという。司会を務めるオードリー・若林正恭も「うわぁ、こういうことあるわー」と反応していた。

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン