熊さんによると、双興堂は1916年に開業。もともと「双斉澡堂」という名前だった。中国語では「澡堂」は「銭湯」の意味だ。
1949年10月に中国共産党政権が誕生すると、この銭湯も国営企業となり、名前も「南苑浴池」に改められ、2004年、熊さんの父親が買い取って、個人経営の「双興堂」となったという。
中国に初めて銭湯が登場したのは宋時代(960~1279年)の12世紀のことで、もっと古い銭湯は江蘇省南京市にあった「甕堂」だったが、惜しくも2014年2月、600年以上の歴史に幕を閉じた。
双興堂はそれには及ばないものの、いまや中国内では古い銭湯の部類に入る。しかし、経費の問題のほかにも、周辺には開発の波が押し寄せており、北京市政府も一帯の大型開発プロジェクトを検討している。
熊さんは最後の手段として、双興堂を北京市の重要文化財として認定してもらうように、市政府に陳情しているが、「市政府は消極的だ」という。
熊さんは「市政府からは、『この2、3年でプロジェクトが始まれば、立ち退いてもらう』と内々で言われている。地元の人々に親しまれている双興堂も100年以上の歴史に幕を閉じる日はそう遠くなさそうだ」と語り、肩を落としている。