国内

美術講座でのセクハラ訴訟、なら『好色一代男』はどうなる?

評論家の呉智英氏

 セクシャルハラスメントには「対価型」と「環境型」がある。対価型とは、性的な言動に対して拒否や抵抗をした相手に、客観的に見て不利益を被らせるようなパターン。環境型とは、性的な言動により環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど看過できない程度の支障が生じるようなときを指す。そんな中、大学の講義が「環境型セクハラ」だと訴えられた。評論家の呉智英氏が、表現の自由、学問の自由、教育の自由の問題と環境型セクハラとについて論考した。

 * * *
 弁護士ドットコムニュース(二月二十七日)に、お前の喜びそうな事件が出ていたぞと、友人がプリントを送ってくれた。確かにそう言われてみればそうなのだが、単純に喜んでもいられない。現代美術がらみの事件なのである。

 現代美術なるものに、私は概して冷笑的である。今これについて詳しく述べないが、三十五年前に晶文社から出たトム・ウルフ『現代美術コテンパン』のようなものが何故日本の美術批評界にはないのだろう。ただし、この本は訳文が感心できない。

 さて、事件とは次のようなものである。

 昨春、京都造形大東京キャンパスで社会人向け公開講座が催された。講師は現代美術作家の会田誠。この講座を受講した三十九歳の女性が「環境型セクハラ」を受けたとして、大学を相手どり三百万円余りの慰謝料を求める訴訟を起こした、というのだ。

 環境型セクハラというのは、教員が学生個人にけしからぬ行為をするのではなく、講義全体がセクハラだったという意味らしい。その講義では、会田自身の作品がスクリーンに映し出されたが、それは、少女が強姦されて涙を流している絵や全裸の女性が排泄している絵で、受講女性は強いショックを受けた。その後も動悸・不眠などの症状が続き、急性ストレス障害と診断されたという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
水原一平容疑者は現在どこにいるのだろうか(時事通信フォト)
大谷翔平に“口裏合わせ”懇願で水原一平容疑者への同情論は消滅 それでもくすぶるネットの「大谷批判」の根拠
NEWSポストセブン
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
大久保佳代子 都内一等地に1億5000万円近くのマンション購入、同居相手は誰か 本人は「50才になってからモテてる」と実感
女性セブン
宗田理先生
《『ぼくらの七日間戦争』宗田理さん95歳死去》10日前、最期のインタビューで語っていたこと「戦争反対」の信念
NEWSポストセブン
焼損遺体遺棄を受けて、栃木県警の捜査一課が捜査を進めている
「両手には結束バンド、顔には粘着テープが……」「電波も届かない山奥」栃木県・全身焼損死体遺棄 第一発見者は「マネキンのようなものが燃えている」
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
ムキムキボディを披露した藤澤五月(Xより)
《ムキムキ筋肉美に思わぬ誤算》グラビア依頼殺到のロコ・ソラーレ藤澤五月選手「すべてお断り」の決断背景
NEWSポストセブン
(写真/時事通信フォト)
大谷翔平はプライベートな通信記録まで捜査当局に調べられたか 水原一平容疑者の“あまりにも罪深い”裏切り行為
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
眞子さんと小室氏の今後は(写真は3月、22時を回る頃の2人)
小室圭さん・眞子さん夫妻、新居は“1LDK・40平米”の慎ましさ かつて暮らした秋篠宮邸との激しいギャップ「周囲に相談して決めたとは思えない」の声
女性セブン
いなば食品の社長(時事通信フォト)
いなば食品の入社辞退者が明かした「お詫びの品」はツナ缶 会社は「ボロ家ハラスメント」報道に反論 “給料3万減った”は「事実誤認」 
NEWSポストセブン