国内

がんセンター名誉総長「根拠のない高額療法はおやめなさい」

がん治療の権威、垣添忠生さん(撮影/矢口和也)

 2人に1人ががんになる現代。そのリスクは決して他人事ではない。では、がんを受け入れ、ともに生きていくにはどうしたらいいのだろう。果たして、共生する方法は、あるのだろうか。

 がんを理由に部下を解雇した上司も、その翌日にがんが見つかるかもしれないのだ。1975年からは国立がんセンター(現・国立がん研究センター)に勤務し、中央病院長や総長を歴任し、現在は名誉総長を務める垣添忠生さん(78才)はこう語る。なお、垣添さんの妻はがんで亡くしている。

「1つはやはり、国がすすめているがん検診を、きちんと受けること。男女ともに胃がん、肺がん、大腸がん。女性は加えて子宮頸がんと乳がんの検診は、受けていただきたい。一方で、標準的な治療をしても治る見込みがないとわかった場合は『残された時間をどう生きるか』を考えることも、同じくらい大事だと思うのです」(垣添さん、以下「」内同)

 しかし実際には、「なんとかして治す方法がないものか」と高額で根拠のない療法にすがる患者や家族も後を絶たないという。

「私は『もうおやめなさい』とアドバイスしています。“夢の新薬”といわれるオプジーボも、効く人は2~3割です。治療を尽くして医師から緩和ケアの提案があった時は、受け入れ、満足に最期を迎える方法を考えた方がいい」

 本人の希望に添って看取ることは、家族がその後、生きていくことにも大きく関係する。

「私が前を向いて生きてこられたのは、妻と自宅で過ごした最後の4日間があったからといっても過言ではない。私は医者だから人よりも多少知識はありましたが、誰でも事前の準備次第で、満足いく最期を過ごすことができるはずです」

 そのためには、何をしておけばいいのだろうか。

「自宅で最期を迎えたいと考えるかたは多いですが、地域によって受けられるケアに差があります。お住まいの地域にある在宅ケアの施設や診療所を調べて、目途をつけておくことが大事です。すでに病院にかかっている場合は、医師に相談するか、病院のメディカルソーシャルワーカーに相談する。先を見越して、ある程度元気なうちに調べておくと安心です」

◆心のケアのやり方は

 最善を尽くしても、必ず人に死は訪れる。どんな別れになろうとも、大切な人の死を簡単に受け止めることは難しい。垣添さんは、残された人が立ち直るために行う「グリーフワーク」が重要だと説く。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
中途採用応募者が急に増えて担当者は困惑(写真提供/イメージマート)
《SNSの偽情報で実害》中途採用に「条件満たさない」応募者が激増した企業、勝手にFラン認定された大学は「少子化の中、学生に来てもらう努力を踏み躙られた」
NEWSポストセブン
趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
日本復帰2戦目で初勝利を挙げたDeNAの藤浪晋太郎(時事通信フォト)
横浜DeNA・藤浪晋太郎を大事な局面で起用する三浦大輔監督のしたたかな戦略 相手ファンからブーイングを受ける“ヒール”がCSの行方を左右する
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
15人の大家族「うるしやま家」(公式HPより)
《ビッグダディと何が違う?》フジが深夜23時に“大家族モノ”を異例の6週連続放送 今、15人大家族「うるしやま家」が人気の背景 
NEWSポストセブン
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン