ライフ

仕掛け番長がハマった『トラとミケ』何気ない日常と登場人物

TSUTAYAの栗俣力也さんも大絶賛

 TSUTAYAの栗俣力也さんは、書店業界で「仕掛け番長」と呼ばれている。『マンガ担当書店員が全力で薦める本当にすごいマンガはこれだ!』などの著書もある栗俣さんは、これまで文庫やコミックジャンルにおいて多くの商品企画、イベントを手掛け、実績を挙げてきた。そんな栗俣さんは、発売たちまち話題沸騰中の『トラとミケ いとしい日々』(ねこまき作)をどう読んだのか。スペシャル書評をお届けします。

 * * *
 世の中は忙しなく、なんだか毎日の生活の記憶も曖昧に感じてしまう。気持ちが落ち込むような嫌なニュースばかりが報道され人の汚い部分が嫌でも見えてしまうようなそんな日常の中で私はこの作品と出会いました。

 この物語はトラとミケの日常を描いた漫画です。姉のトラはしっかりもの、妹のミケはのんびり屋さん。ふたりのばーちゃんは牛すじやモツを赤味噌でじっくり煮込んだどて煮とサクサクの串カツが人気のどて屋を切り盛りしながら生活をしています。

 例えばこんなシーンがあります。

 仕事を終え、お風呂に入り、お茶漬けでも食べたいなーとトラが思い、ミケにあんたも食べる?なんて聞いて、ミケはぬか床からきゅうりとナスを、トラに「せっかくお風呂上りにぬか床さわらなくても、梅干でいいじゃない」なんて言われながら出して、お茶漬けにしてふたりで食べてホッとする。

 いわゆる日常的な場面で何気なくて幸せな瞬間。何気ないこんなシーンが私はとても羨ましくなりました。

 昔はどこにでもあって、それこそ私が子供のころおばあちゃんがよく実家のぬか床からきゅうりやナスを出してくれて普通に美味しく食べてました。今はそんないつも隣にあったはずの瞬間は気づかないうちに無くなってしまったなと。

 そんな寂しさも感じながら1話また1話と『トラとミケ』を読んでいたのですが今度は登場人物たちの悩みに自分を重ねて何気ないシーンで涙が出て来たりして、全然泣くようなシーンじゃないのにトラとミケも別にいいことを言おうとしたり感動させるような仕掛けは一切無くて、ただただ話を聞いてなんとなく思ったことを言ってるだけなのに。

 このころには私はこの作品にハマっていました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
中途採用応募者が急に増えて担当者は困惑(写真提供/イメージマート)
《SNSの偽情報で実害》中途採用に「条件満たさない」応募者が激増した企業、勝手にFラン認定された大学は「少子化の中、学生に来てもらう努力を踏み躙られた」
NEWSポストセブン
趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
日本復帰2戦目で初勝利を挙げたDeNAの藤浪晋太郎(時事通信フォト)
横浜DeNA・藤浪晋太郎を大事な局面で起用する三浦大輔監督のしたたかな戦略 相手ファンからブーイングを受ける“ヒール”がCSの行方を左右する
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
15人の大家族「うるしやま家」(公式HPより)
《ビッグダディと何が違う?》フジが深夜23時に“大家族モノ”を異例の6週連続放送 今、15人大家族「うるしやま家」が人気の背景 
NEWSポストセブン
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン