◆最近は正式に協定書を結ぶケースも
なぜ今回このテーマを取り上げたかというと、現場での取り組みという段階から私立中高の校長と私立大学の学長とが立ち会いの下で正式に“協定書”を結ぶケースが出てきたからです。そうした背景には冒頭に述べた「大学とのつながり」を重視したいという中高側の事情があります。私が把握しているものを挙げてみます。
・三輪田学園と法政大学
・森村学園と昭和大学
・麹町学園女子と東洋大学、東京女子大学、共立女子大学、成城大学、女子栄養大学
・玉川聖学院と東京女子大学
・桐朋女子と東京女子大学
・富士見丘と明海大学
・横浜女学院と東京女子大学
森村学園は共学ですが、他はすべて女子校です。女子校は学校数が多いので必然的に生徒募集競争が厳しくなります。それだけに生活指導、キャリア教育をはじめ、あらゆる面で男子校・共学校以上にいろいろ工夫しています。「高大連携」に熱心なのもそうした姿勢の反映です。
また、お気づきかと思いますが、女子高校生は進路として医療系、国際系、管理栄養士、外国語学部を希望する人が多いので、そうした学部・学科を有する大学と提携しているケースが目立ちます。
森村学園と昭和大学、麹町学園女子と東洋大学・女子栄養大学もそうですし、富士見丘と明海大学の場合は、富士見丘がSGH(スーパーグローバルハイスクール校)なので、外国部学部と親和性があります。協定を結ぶにあたっては過去の入学実績などが前提としてあるわけですから、当然といえば当然です。
◆先陣を走る麹町学園女子
高校側から見ると麹町学園女子がもっとも多くの大学と連携していることがわかります。これは山本三郎校長の経験によるところが大きいのです。山本校長は麹町学園に来る前は大阪の帝塚山学院の校長で、その時代に「関西学院コース」というものを作りました。
その他にも関西には首都圏では見られないこうした「高大連携コース」がいろんな学校にあります。例えば、平安女学院中高、育英西中高に「立命館コース」が、京都聖母学院に「同志社女子大連携コース」といった具合です。
麹町学園の「東洋大学グローバルコース」は首都圏初のコースといっていいでしょう。評定平均値3.5以上で、英検2級以上を取得していれば80名まで12学部35学科に進学できるという画期的なものです。もちろんこれだけが要因ではありませんが(英語教育の改革の成果が大きい)、麹町学園の入試は中高とも好調です。
有力私大の難化が著しいこと、またわが子が受けることになる大学入試改革がいまひとつハッキリしないことから、ある程度保証された進路があることは受験生・保護者にとって魅力なのです。それだけにここへきて私立中高側も急速に「高大連携」に力を入れるようになっています。