九四年からはTPT(シアタープロジェクト東京)に参加、デヴィッド・ルヴォー、ロバート・アラン・アッカーマンといった海外の舞台演出家と組んだ。
「主に映像で活動するようになると、つか事務所時代の役者としての貯金をはたいてしまったんです。こういう役者を目指す、というのが全くないままで済んだので、大元が薄いものだからだんだんと役者の質量が小さくなっている気がしていたんです。
つかさんと芝居をしなくなって、不完全燃焼が続いていました。仕事をいただけるから行くけど、モチベーションが高まっていないのにやっていた。生活があるから、という感じでした。
それで『芝居をしたいな』『でもやりたいのは大きいのではなく、僕の出発点である小さいところ』と思うようになりまして。それでTPTをやっていました。
日本では演出家に言われるままに動く。それだと芝居に限りがあります。外国の演出家は稽古のあと『質問がありますか?』と聞いてくるんです。いろいろ質問しているうちに、自分で発見がある。セリフの言い方が変だったり。言われたまま完全に理解しないでやっていると活きた人間じゃなくなるんですよ」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『すべての道は役者に通ず』(小学館)が発売中。
■撮影/木村圭司
※週刊ポスト2019年8月2日号