芸能

平田満が鶴田浩二、勝新太郎、緒形拳と共演できた楽しさ

平田満が大物俳優との共演エピソードを語る

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、テレビドラマに出演するようになった俳優の平田満が、鶴田浩二、勝新太郎、緒形拳といった大御所俳優と共演した思い出、海外の舞台演出家と組んで得られたことについて語った言葉を紹介する。

 * * *
 平田満は一九八六年、山田太一脚本・深町幸男演出のNHKドラマ『シャツの店』に出演。鶴田浩二扮する昔気質のYシャツ職人に時おり文句を言いながらも付き従う弟子を演じている。

「当時の看板スターというのは独特の緊張感がおありで、鶴田さんも自分なりの役作りというのをちゃんと持っていた。でも、いちいち『そのやり方は違う』とは言ってはきません。

 威圧感もありませんし、普段も冗談をおっしゃるし、山田太一さんのお芝居ですから話もごく日常。しかも僕は鶴田さんにダメ出しする役です。にもかかわらず、気軽に、軽々しくお芝居はできない──。そんな役者としての質量の高さが鶴田さんにはありました。それでも僕には『どうせつかさんに教わったことしかないし』と思っていたからやれたんでしょう」

 八七年には大河ドラマ『独眼竜政宗』に出演、伊達家の家臣・鈴木元信を飄々と演じた。

「小さい役ですが、けっこう出番は多いんですよね。でも、そんなに芝居どころはなくて。覚えているのは、勝新太郎さんの秀吉とワンシーンだけ一緒になったところです。僕がダーっと駆けてきて、名前とか地名とかを報告するんですが。噛んでしまい、上手くできなかった。

 鶴田さんの後だから怖さを知っていたんです。勝新さんだからもっと怖くて、独特の威圧感があって。いくら噛んでも『おお、いいよいいよ』と、全く緊張感を醸し出さない。逆に、それがドキドキするんですよ。

 緒形拳さんもそうでしたが、そういう大俳優さんたちとは、やっていて楽しかったです。そばにいるだけでも嬉しいのに、こちらの芝居をちゃんと受けてくださる。『こいつにはこの程度で』というおざなりがない。

 だからこそ威圧感があったんでしょうし、こちらへのプレッシャーも凄い。それで僕も余計に良い動きができました」

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン