6つのテストは、複数の第三者機関に依頼して実施したという。同社によれば、花粉やウイルスを「分解する効果」については、契約の問題で社名を公表できないが、専門の検査機関に依頼したという。マスク片に黄色ブドウ球菌を含む液を添加し、光を照射したところ、8時間で分解され、100分の1以下に減少。同様の試験で、A型インフルエンザウイルスは4時間で100分の1以下、スギ花粉アレルゲンは1時間で検出限界以下(0.12%以下)にまで減少したとしている。
花粉やウイルスを「捕集する能力」については、商品パッケージにも記載されているとおり、花粉についてはカケンテストセンター、ウイルスについてはネルソン研究所に検査を依頼し、マスクを通過するインフルエンザウイルスを含む飛沫や花粉を99%以上捕集することを確認したとしている。
「ウイルスは小さいのでマスクのフィルターを通過する」とよく誤解されているが、インフルエンザは空気感染ではなく、飛沫感染なので、マスクで捕らえることは可能なのである。
そうした試験結果を消費者庁に提出したところ、同庁は意外な形で反証してきたという。面談交渉に当たった同社セルフメディケーション研究開発本部長の高橋健三氏はこういう。
「おそらく消費者庁は第三者機関に依頼したと思われますが、検証試験の結果を提示してきました。ビーカーに花粉を付着させたマスク片を封入し、光を当てて放置し、二酸化炭素濃度を測定したら、濃度が上がらなかったとのことで、『水と二酸化炭素に分解されていない』と説明されました。しかし、弊社では、水や二酸化炭素に変えるところまで反応が進むとは考えにくいので、パッケージには『分解する』と表記しています。ですから、最初から『水と二酸化炭素に変えるという表記はしていない』と反論したのですが、『虚偽ではないが、誇大広告である』として処分されたのです」
他の3社の製品では「水(と二酸化炭素)に変える」と表記しているので、実験で二酸化炭素濃度が上がらなかったという結果から、その表記が虚偽であることを証明できる。しかし、大正製薬は「水や二酸化炭素に変える」とは謳っていないのである。
ただ、消費者庁側は「検証実験はしていない」と回答していたので、ここは両者の話に食い違いがある。再度、同庁表示対策課に取材を申し入れたが、やはり「個別の事案には答えられない」という回答だった。
大正製薬側は消費者庁に対し、「製薬メーカーとして『エビデンスがない』などと言われるのは看過できませんし、『虚偽ではないが、誇大広告である』というなら、虚偽ではないと認めているわけで、では、どの部分が誇大広告なのかを示していただきたい」(前出・高橋健三氏)と憤りを露わにする。