ライバルメーカーの首脳は「今回のリストラ策が(発表)直前までルノー側に伝えられていなかった」ことに強い関心を寄せている。「意思疎通がうまくいっていない」(同)と断じる向きもある。

 日産の業績悪化は、43%を出資する仏ルノーの業績も直撃した。ルノーの2019年1~6月期決算の純利益が前年同期に比べてほぼ半減し、9億7000万ユーロ(約1170億円)となった。日産から受け取る利益が前年同期の8億500万ユーロから、この決算では2100万ユーロの減益要因となった。純利益の落ちた分の8割超がこの影響によるものだ。

 日産はこれまで、筆頭株主のルノーを上回る業績を背景に、ルノーに対して一定の発言力を確保してきた。だが、業績悪化でルノー側の発言力が一段と強まり、経営統合圧力が高まる。

 ルノーのティエリー・ボロレCEOは7月26日のアナリスト向けの電話会見で「日産(の経営)が復調するよう、支援や助け、できることすべてを探ることが今は優先事項だ」と語った。

 ここで日産vsルノーの闘いの歴史を少し振り返ってみると、これまで両社は経営統合を巡り、鍔迫り合いを演じてきた。ルノーは日産に共同持ち株会社方式による経営統合を提案。東京、パリ以外の第三の都市に共同持ち株会社を設立し、傘下に日産とルノーを傘下にぶら下げる。持ち株会社のトップにはルノーのジャンドミニク・スナール会長が就く。

 ルノーの統合案によると、持ち株会社は東京とパリの証券取引所に上場し、傘下の日産とルノーは非上場化する。持ち株会社の役員は両社から同じ人数にするとなっていた。

 ルノーに15%出資し、ルノーに対し日産との経営統合を再三求めてきた仏政府は将来的には持ち株会社の株を手放すとしていたが、マクロン仏大統領の胸の内は分からない。「日産をフランスの自動車企業にすることが、大統領選で勝つための切り札になる」(在パリのジャーナリスト)からだ。

 日産vsルノーの関係が先鋭化したのは、マクロン大統領がルノーに日産との早急な経営統合を求めたことが発端だった。つまり、仏政府は日産を自国の企業にして、国内に自動車工場をつくり、雇用を創出するのが狙い──といわれている。

 だが、ルノーが日産に約43%出資する一方、日産のルノーの持ち分は15%にとどまるうえに議決権がない“不平等条約”であるため、経営統合は、ズバリ日産がルノーに呑み込まれることを意味する。当然のことだが、日産の西川社長兼CEOはルノーの統合提案を拒否した。

 そこで、ルノーは作戦を変更し、日産の経営中枢に拠点を築いた。日産は6月末の株主総会で業務執行と監督を分離する指名委員会等設置会社に移行。「指名」「報酬」「監査」の3委員会を設けた。ルノーはジャンドミニク・スナール会長が指名委、ティエリー・ボロレCEOが監査委の椅子を確保した。

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