ライフ

大林宣彦氏が孫に読ませたい本「美しく正直で綺麗な日本語」

大林宣彦監督が孫に読ませたい本は?(写真/時事通信フォト)

 超難関中学に進学した女優・芦田愛菜(15)が読書愛を語る著書『まなの本棚』が、発売早々ベストセラーに。孫を本好きにしたいと願う祖父母世代が多く買い求めているというが、ではどんな本を孫に読ませればいいのか──。映画監督の大林宣彦氏(81)が勧めるのは、『中原中也全詩集』(中原中也著・角川ソフィア文庫 1360円+税)だ。

 * * *
 私は中原が亡くなった翌年、1938年に生まれました。大日本帝国が戦争をしていたあの時代、叔父が「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」という中原の詩を口ずさむのを、子守唄のように聞いていたのが、最も古い記憶です。

 国民学校に通い、軍国少年として育った私には、戦争に敗れて国家が滅びていく中で、日本人の大人に騙されたという思いが強く芽生えた。対して、中原の詩は幼児言葉みたいに美しく、正直で綺麗な日本語でした。幼い私は、戦争の時代に多様な詩を残した中原に影響を受けたのだと思います。

 今度は孫世代の若い人たちに読み継いでもらい、未来を変えてほしいという気持ちがある。全詩集には、中原が著名になってからの詩だけでなく、無名時代の詩、言葉の断片と言ったほうが近い作品が入っている。一生を懸けた詩人の思考が読み取れる。

 戦前戦後の日本人である私は「平和難民」ですが、今の日本人は「平和孤児」だとも感じます。経済的な繁栄で突き進んできて、それが崩壊しつつあり、何をどうしていけばいいのかという悩みが広がっている。こういう時代だからこそ、戦争の歴史の中で編まれた中原の詩に触れてほしい。

※週刊ポスト2019年8月16・23日号

中原中也全詩集 (角川ソフィア文庫)

関連キーワード

関連記事

トピックス

ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン