「ベルカーブの世界では大半がサラリーマンと専業主婦家庭で、『高給とり』といわれる人でもせいぜい年収1000万円を超える程度でした。それがロングテールの世界に変わったことで、年収300万円以下の非正規社員などのショートヘッドと、新卒で年収3000万円を提示されるエンジニアや、株で年収3億円を稼ぎ出す20代といったロングテールが生まれた。かつて分厚く形成されていた中間層が崩壊し、『下級国民』と『上級国民』の分断が加速しているのです。
実際、アメリカでは、ビル・ゲイツ氏(マイクロソフト創業者)やジェフ・ベゾス氏(アマゾン・ドット・コム共同創業者)をはじめ、最富裕の上位400人が所有する富が下位50%の富の合計を上回り、上位1%が米国の個人資産の42%を所有するほど、富の集中と格差の拡大が進んでいるとされています。
もはや日本でも『一億総中流』は幻想にすぎず、ベルカーブの世界へと戻ることはありえない。ショートヘッドの『下級国民』とロングテールの『上級国民』へと分断された社会でどう生き延びていくかという“残酷すぎる現実”にさらされているのです」(橘氏)
◆橘玲(たちばな・あきら):1959年生まれ。作家。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)などベストセラー多数。新刊『上級国民/下級国民』(小学館新書)が話題。
*編集追記:さらに詳しい解説については、橘玲氏のブログを参照。
〈『上級国民/下級国民』をベルカーブとロングテールで説明する〉(https://www.tachibana-akira.com/2019/08/11838)