ライフ

痴漢冤罪、その場から逃げるのはなぜNG?【岩瀬達哉氏書評】

『裁判官が答える裁判のギモン』 日本裁判官ネットワーク・著

【書評】『裁判官が答える裁判のギモン』/日本裁判官ネットワーク・著/岩波ブックレット /660円+税
【評者】岩瀬達哉(ノンフィクション作家)

 午後の比較的空いていた電車の中で、数人の女子高生に囲まれたことがあった。不穏な空気を感じて振り向くと、リーダー格の子が「痴漢だと騒いで、慰謝料を取ろっか」とつぶやき、その隣にいた小柄で華奢な女子は、上目遣いに薄ら笑いを浮かべていた。

 さすがに満員でなかったため、痴漢をでっちあげるのは無理と考えたのだろう。痴漢冤罪の濡れ衣を着せられることはなかったが、彼女たちが一斉に騒いでいたらと思うと、いまでもゾッとする。

 知り合いの弁護士は、痴漢と騒がれた時の対処法を「とにかくその場から逃げること」と言った。しかし裁判官の手による本書は、それがいかに危険な行為であり、取り返しのつかない罪状に繋がるかを教えてくれている。

 裁判官の目から見て、逃げることは痴漢を認めたも同然であり、「ホームから飛び降りるような危険な逃走」は、「鉄道営業法違反」をも構成する。「捕まればほとんど有罪」は免れない。「身に覚えがなければ、やっていないと強く否定し、名刺を相手に渡す、免許証や身分証明書を相手の携帯電話で写真に撮らすなどして身元を明らかにし、逃げ隠れしないことを伝える」。そうしておけば、たとえ裁判になっても裁判官の心証は悪くはならないという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
日本テレビの杉野真実アナウンサー(本人のインスタグラムより)
【凄いリップサービス】森喜朗元総理が日テレ人気女子アナの結婚披露宴で大放言「ずいぶん政治家も紹介した」
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬の宮城野親方
元・白鵬の宮城野部屋を伊勢ヶ濱部屋が“吸収”で何が起きる? 二子山部屋の元おかみ・藤田紀子さんが語る「ちゃんこ」「力士が寝る場所」の意外な変化
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン