平成11(1999)年の馬券売上は、馬連が80%近くを占め、枠連が13%、単勝と複勝が3%ずつといった具合だったが、翌年、ワイドのシェアは枠連を上回る。馬連のシェアも10%ほど落ち、総売上でも2000億円ほどマイナスだから、新たなファンを獲得したというより、従来のファンの志向の変化とみるべきだろう。ワイドはその後の高配当を期待できる新馬券の登場で、徐々にシェアを減らしていくが、売上が底を打った平成23(2011)年あたりからV字回復。一家言を持つ「ワイド派」も増えてきた。
当初は初心者向きという印象。確かに上位人気どうしのワイドは的中する可能性が高いし、馬連を上回る払戻金になることもある。しかし高配当を得るためには上位人気の組み合わせだけではなく、自分自身で馬を見る目を鍛えていかなければならない。たとえ単勝オッズが50倍、60倍、ときには100倍を超えていても、パドックや返し馬でピンと来た馬を軸にする勝負勘が求められる。うまくはまれば「1本かぶり」や「2強決着」でその通りに決まっても、それなりの配当が期待できるし、買い方によっては2通り3通りの的中にも巡り合える。
ワイドの1着3着、2着3着が馬連よりついているレースは、今年上半期だけを見ても3分の1もある。馬連や馬単でスランプに陥った時は、ワイド勝負を試してみてはどうだろうか。ローリターンで物足りないかもしれないが、穴党ならそのうまみを味わう時が訪れるはずだ。
●ひがしだ・かずみ/今年還暦。伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。
※週刊ポスト2019年8月30日号