ライフ

認知症女性、うつ病?脳梗塞?の症状 驚きの理由は帯状疱疹

84才にして初めて帯状疱疹を発症した女性のエピソード(写真/アフロ)

 認知症の母(84才)の介護をすることになったN記者(55才・女性)。母は認知症以外には大きな持病もなく、明朗快活が取り柄で突然の異変だったと、N記者は振り返る。異変の理由は、なんと帯状疱疹だった。高齢者の帯状疱疹の恐ろしさをお伝えしよう。

 * * *
「Mさん(母)、いつもと様子が違うの。もしかしたら脳の検査をした方がいいかも」と、母が通うデイケアの人から電話がかかってきた。

 普段は、食事の配膳を手伝うほど明るく元気に動くのに、その日は無表情で、気づくとウトウト。食事もほとんど食べられなかったという。そんな様子は私も見たことがない。

 6月からの記録的な長雨が続いていた頃だったから、「うつ病? いや介護のプロが“脳の検査を”と思い当たるくらいだから脳梗塞?」と、次々に嫌な憶測が浮かび、慌てて母の元へ駆けつけた。

 話しかけると一応言葉は出るし麻痺もない。血圧と体温も平常値。でもいつもの母ではない。さてどうするか。厄介なことに明日から連休という日だった。動くなら今しかないと思い、まず#7119に電話。

「いつもと明らかに違う」「介護士が脳の検査をすすめた」ことを強調しながら、母の様子を伝えると、「緊急性はなさそうですね。様子を見てもいいかも…」と、つれない返答。

素人としてはこれ以上食い下がれず、あきらめて電話を切ろうとした時だ。モゾモゾ脇腹を触っていた母のシャツがめくり上がり、その下にギョッとするほど赤くただれた肌が見えた。

「えーっ!? お腹のあたりが真っ赤です! 膿も出てグジュグジュ! それ、どうしたのよ!? ママーッ!!」と、急に絶叫モードで、でも必死に電話口で実況中継。救急相談の人もさぞ驚いたのだろう。即、救急車出動となった。

「えっ!? ここ救急車? すごいわ! 私、生まれて初めてよ。よく見ておかなきゃ」

 今、自分の足で救急車に乗ったことも即忘れ、母はウキウキと興奮気味だ。少々気まずい車内の空気に耐えつつ、運ばれた病院で診察を受けると、なんと病名は帯状疱疹。

「え、脳は関係なし?」と、心の中で大いに愕然とした私。

「体の右側だけ発疹が出てるでしょ? 気づかなかった? たいてい痛みから始まるけれど、認知症があると痛みを感じにくいこともあるから、気をつけてあげなきゃ」と医師。認知症の老親と別々に暮らす娘の痛いところを突いてきた。

 処方は内服薬と塗り薬。内服管理はヘルパーさんに頼めるが、塗り薬は無理だ。その日の夜から毎日通い、母を入浴させ、薬を塗るという実質的な介助をすることになった。

 これまではなんとなく寄り添って母の自立を支援する立ち位置だったのが、さらに一歩、母の領域に踏み込む。世の多くの介護家族にとっては当たり前のことだが、私と母には初めての“介助する・される”作業なのだ。

「はい、シャンプー泡立てて」「背中流すよ」と、あえて無心で作業した。母も促されれば自分で洗えるのでスムーズだった。でも、赤くただれた背中の帯状疱疹にシャワーを当てると、母と2人、介護の階段をひとつ上ったようで、胸がいっぱいになった。

「はい、サンキューでした」

 薬を塗って髪を乾かし、作業が完了すると、母が明るく言った。私が子供の頃から続く口癖が、うれしかった。

※女性セブン2019年9月5日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

直面する新たな課題に宮内庁はどう対応するのか(写真/共同通信社)
《応募条件に「愛子さまが好きな方」》秋篠宮一家を批判する「皇室動画編集バイト」が求人サイトに多数掲載 直面する新しい課題に、宮内庁に求められる早急な対応
週刊ポスト
ポストシーズンに臨んでいる大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平、ポストシーズンで自宅の“警戒レベル”が上昇中 有名選手の留守宅が狙われる強盗事件が続出 遠征時には警備員を増員、パトカーが出動するなど地元警察と連携 
女性セブン
「週刊文春」の報道により小泉進次郎(時事通信フォト)
《小泉進次郎にステマ疑惑、勝手に離党騒動…》「出馬を取りやめたほうがいい」永田町から噴出する“進次郎おろし”と、小泉陣営の“ズレた問題意識”「そもそも緩い党員制度に問題ある」
NEWSポストセブン
懲役5年が言い渡されたハッシー
《人気棋士ハッシーに懲役5年判決》何度も「殺してやる」と呟き…元妻が証言した“クワで襲われた一部始終”「今も殺される夢を見る」
NEWSポストセブン
江夏豊氏(左)、田淵幸一氏の「黄金バッテリー」対談
【江夏豊×田淵幸一「黄金バッテリー」対談】独走Vの藤川阪神について語り合う「1985年の日本一との違い」「短期決戦の戦い方」
週刊ポスト
浅香光代さんの稽古場に異変が…
《浅香光代さんの浅草豪邸から内縁夫(91)が姿を消して…》“ミッチー・サッチー騒動”発端となった稽古場が「オフィスルーム」に様変わりしていた
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左/共同通信)
【前橋市長のモテすぎ素顔】「ドデカいタケノコもって笑顔ふりまく市長なんて他にいない」「彼女を誰が車で送るかで小競り合い」高齢者まで“メロメロ”にする小川市長の“魅力伝説”
NEWSポストセブン
関係者が語る真美子さんの「意外なドラテク」(getty image/共同通信)
《ポルシェを慣れた手つきで…》真美子さんが大谷翔平を隣に乗せて帰宅、「奥さんが運転というのは珍しい」関係者が語った“意外なドライビングテクニック”
NEWSポストセブン
部下の既婚男性と複数回にわたってラブホテルを訪れていた小川晶市長(写真/共同通信社)
《部下とラブホ通い》前橋市・小川晶市長、県議時代は“前橋の長澤まさみ”と呼ばれ人気 結婚にはまったく興味がなくても「親密なパートナーは常にいる」という素顔 
女性セブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人の時効が消滅》「死ぬ間際まで與一を心配していました」重要指名手配犯・八田與一容疑者の“最大の味方”が逝去 祖母があらためて訴えた“事件の酌量”
NEWSポストセブン
男性部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長
「青空ジップラインからのラブホ」「ラブホからの灯籠流し」前橋・42歳女性市長、公務のスキマにラブホ利用の“過密スケジュール”
NEWSポストセブン
「ゼロ日」で59歳の男性と再婚したという坂口
《お相手は59歳会社員》坂口杏里、再婚は「ゼロ日」で…「ガルバの客として来てくれた」「専業主婦になりました」本人が語った「子供が欲しい」の真意
NEWSポストセブン