田所が「私って懲戒解雇ってことになるんですか?」と尋ねると、
「うーん……。それも自分でわかってないんだよね。なんでわからないの? なんで自分で書いた文面が読めないの? 勤怠不良だから、自主的に辞めることになるんでしょう」(担当者)
会話が録音された音源を聞きながら、ひどい話だな、と私は思った。派遣会社のやりたい放題である。
東京労働局の発行するパンフレットによると、「解雇のルールを確認しましょう」として、「(雇用主は)解雇事由を明示しなければなりません」とあり、次に「解雇権の濫用による解雇は無効です」とある。
そこには、「『体調が悪く連絡できないまま無断欠勤をした』といったやむを得ない理由があった〈中略〉だけで解雇することはできません」と明記してある。まさに、田所はこれに当てはまる。さらに懲戒解雇ではないのなら、企業は、労働者に30日前に解雇を告げるのか、あるいは、30日分の解雇予告手当を払う必要がある、と書いてある。
田所が約1か月後、ワールドインテック宛に「退職勧奨の拒否等に関する通知書」という書面を送ると、すぐに返事があった。同社の小田原事務所の所長名でこう書いてあった。日付は、平成30年2月1日。
「貴方より会社宛にお送り頂きました平成30年1月27日付の通知を拝見しました。会社は、同通知内容につき事実関係を調査しました結果、解雇予告手当相当額をお支払いさせて頂くことに決定いたしましたので、ご通知申し上げます。お支払いにつきましては、あなたの平均賃金の30日分、金152,460円を平成30年2月15日までに貴方の給与振込口座へ入金いたしますのでご確認ください」