国内

古墳調査の是非論、根底には「知の特権」と「人権」の対立

世界遺産に登録された百舌鳥古墳群(写真/時事通信フォト)

 真実や真相と求めて、調査や研究をすすめることが、常に正しいとされるわけではない。天皇陵と伝えられる古墳の学術調査を巡って起きている対立を例に、評論家の呉智英氏が「知の特権」と「人権」の対立について解説する。

 * * *
 この七月六日、ユネスコの世界遺産委員会は、百舌鳥(もず)・古市古墳群の世界文化遺産登録を決定した。日本の文化財が世界的に評価されることは大変に喜ばしい。

 この古墳群には国内最大の大山古墳が含まれる。これは宮内庁が仁徳天皇陵として管理しているが、「考古学者や歴史学者からは『被葬者が学術的に確定していない』として」この名称での登録に反対する声が出ている(七月七日付朝日新聞)。「伝(でん)仁徳天皇陵」という呼び方をすることもある。「と伝えられる」という意味だ。

 私も概ねこれに賛成だが、議論が次の段階に進むと、簡単に答えが出しにくくなる。それなら被葬者を学術的に確定するために調査をしよう、という意見に、賛成していいのか、よくないのか。

 先の朝日新聞では「非公開で本格的な発掘調査が認められておらず」としているし、同日の産経新聞では「宮内庁は『世界遺産となっても皇室祭祀が行われる〈祈りの場〉に変わりはない』と強調。『墳丘内部への立ち入りを認めることはない』」と報じる。要するに、研究者の側は真実を知りたいし、宮内庁の側は皇室の尊厳を守りたい、という対立構造がある。

 この二つのうち、宮内庁側は敢えて言いたがらないのだが、一般の国民を例にとるとかえってその主張が理解されやすい。皆さんの家のお墓について考えてみて下さい。学者たちがお墓を掘り返して、遺体か遺骨の寸法を計ったり化学分析したりして、それが嬉しいですか。曽祖父様が皆さんと血がつながってないと分かったとして、迷惑なだけじゃありませんか。調査など、余計なお世話でしょ、という説明だ。

関連記事

トピックス

ギャンブル好きだったことでも有名
【徳光和夫が明かす『妻の認知症』】「買い物に行ってくる」と出かけたまま戻らない失踪トラブル…助け合いながら向き合う「日々の困難」
女性セブン
破局報道が出た2人(SNSより)
《井上咲楽“破局スピード報告”の意外な理由》事務所の大先輩二人に「隠し通せなかった嘘」オズワルド畠中との交際2年半でピリオド
NEWSポストセブン
『君の名は。』のプロデューサーだった伊藤耕一郎被告(SNSより)
《20人以上の少女が被害》不同意性交容疑の『君の名は。』プロデューサーが繰り返した買春の卑劣手口 「タワマン&スポーツカー」のド派手ライフ
NEWSポストセブン
河村勇輝(共同通信)と中森美琴(自身のInstagram)
《フリフリピンクコーデで観戦》バスケ・河村勇輝の「アイドル彼女」に迫る“海外生活”Xデー
NEWSポストセブン
ポジティブキャラだが涙もろい一面も
【独立から4年】手越祐也が語る涙の理由「一度離れた人も絶対にわかってくれる」「芸能界を変えていくことはずっと抱いてきた目標です」
女性セブン
生島ヒロシの次男・翔(写真左)が高橋一生にそっくりと話題に
《生島ヒロシは「“二生”だね」》次男・生島翔が高橋一生にそっくりと話題に 相撲観戦で間違われたことも、本人は直撃に「御結婚おめでとうございます!」 
NEWSポストセブン
木本慎之介
【全文公開】西城秀樹さんの長男・木本慎之介、歌手デビューへの決意 サッカー選手の夢を諦めて音楽の道へ「パパの歌い方をめちゃくちゃ研究しています」
女性セブン
大谷のサプライズに驚く少年(ドジャース公式Xより)
《元同僚の賭博疑惑も影響なし?》大谷翔平、真美子夫人との“始球式秘話”で好感度爆上がり “夫婦共演”待望論高まる
NEWSポストセブン
綾瀬はるかが結婚に言及
綾瀬はるか 名著『愛するということ』を読み直し、「結婚って何なんでしょうね…」と呟く 思わぬ言葉に周囲ざわつく
女性セブン
中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
やりたいことが見つかると周りがみえなくなるほど熱中するが熱しやすく冷めやすいことも明かした河合優実
大ブレイクの河合優実、ドラマ『RoOT/ルート』主演で感じる役柄との共通点「やりたいことが見つかると周りが見えなくほどのめり込む」
NEWSポストセブン
昨年9月にはマスクを外した素顔を公開
【恩讐を越えて…】KEIKO、裏切りを重ねた元夫・小室哲哉にラジオで突然の“ラブコール” globe再始動に膨らむ期待
女性セブン