人類の長い歴史のなかで、男は“競争する性”、女は“選り好みする性”として進化しました。競争力のある男は複数の女から選ばれ、競争力のない男は誰からも選ばれません。
男も女も誰もが自らの意思で結婚・離婚する自由恋愛の社会では、マジョリティであるはずの男性は、必然的に〈モテ=持てる者(上級国民)〉と〈非モテ=持たざる者(下級国民)〉に分裂してしまいます。そして「下級国民」は、仕事=会社共同体だけでなく性愛からも排除され、自己を丸ごと否定されることになります。この二重の排除は、最近では“居場所がない”と表現されます」(橘氏)
「持てる者」は事実上の一夫多妻を実現し、「持たざる者」は生涯独身のまま人生を終える──。男女の未婚率の差から読み取れるのは、現代社会が「上級」と「下級」に分断されているという“残酷な現実”にほかならない。
◆橘玲(たちばな・あきら):1959年生まれ。作家。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)などベストセラー多数。近刊に『事実vs本能』(集英社)、『上級国民/下級国民』(小学館新書)など。