小児がんの場合、治療の影響で身長が伸びない患者や、学校にうまく戻れなかったり、就労問題に直面することもある。
こうした患者へのフォローアップはほかの病院でも行われつつあるが、HOPEFUL外来では、遺伝子検査で二次がんリスクを調べており、この取り組みは全国でも類を見ない。
「これまでも、治療に使用した抗がん剤の種類や量、放射線治療から、二次がんのリスクを検討し、アドバイスをしていました。ですが遺伝子の変異を調べることによって、どういったがんになりやすいのか、よりはっきりと予測できる可能性があります」
小児がんになった人の約7%が、もともとがんになりやすい遺伝子の変異を持っているという調査もある。
「大腸がんのように、早期発見できれば9割以上治るがんはたくさんあります。ただ若い人はあまりがんにならないので、検診を受ける機会も少なく、発見が遅れがちです。そこで、リスクが高い人には事前に遺伝子情報を提供して、自分で気をつけていく。自分がどの部位のがんにかかりやすいか知っていれば、積極的に検診を受け、生活習慣に気をつけて、早期発見につなげることができます」
しかしその半面、いつ、がんになるのか――といった精神的な不安に悩む可能性がある。遺伝子情報が結婚や出産のハードルになる可能性もある。最終的な決断は、本人や家族に委ねられると中沢さんは言う。
「遺伝カウンセラーや医師から知ることで得られるメリット、デメリットを詳しく説明し、それでも受けたいという場合に検査をします。20才前後の小児がん経験者に声をかけたところ、約7割が説明を聞きたいと回答しました」
がんになりやすい体質ならば、二次がんが治っても、3度、4度とがんになる可能性はある。その事実を受け止め、いかにして生活の中でがんのリスクを軽減するか、対策を立てていくことが重要だ。
※女性セブン2019年9月19日号